このコラムでは、現役建築士寺川がお施主さんとのやりとりの中で感じたことを通じ、みなさんに「幸せな家づくり」についてお伝えします。

家づくりが始まり、親とのやりとりでストレスを抱えてしまうという話を聞いたことはありませんか?

今回は家を建てる時、一部の工事を「親の知り合いの業者」に任せることについてお話します。

知り合いだから安心であると同時に、知り合いだから面倒という側面もあるのです。

「親の知り合いの業者」で大波乱!?

私がM様という方の注文住宅を担当した時の話です。

「水道の引き込み工事は、親の知り合いの業者(以下、O設備と称します)にさせたいのですがよろしいでしょうか?」
打ち合わせも大詰めを迎えたあるとき、施主M様が切り出されました。

その工事分の費用は親が負担してくれそうなので、こちらにお願いしたいのです。」

親御さんが一部でも費用を出されるのであれば、浮いた予算をM様が希望されていた本棚代にまわせると思いました。
工事的にも問題はないと思いましたので、引込工事はO設備にしてもらうことになりました。

さっそく、M様とM様の親御さんを通じて、O設備に工事の段取りをお願いしましたが、すぐにストップしてしまいました。

「確認申請を通した後でないとうちは動かないよ。家建つかどうかも分からんうちに動けないよ。」

何が起こったかというと、O設備さんは確認申請後でないと工事はしないと言うのです。

建築する段階から水は必要です。
O設備の意見に従っていたのでは、いつまでたっても水が使えず着工できません。

水道を引かずに水を用意するとなれば、お隣さんに水を借りるという方法もありますが、300m以上離れている上に頼みづらいらしいのでできません。

もう一つは、タンクに水を詰めて運んでくるという方法もありますが、お金が掛かります。
しかもその費用をだれが負担するのでしょうか?

結局、「O設備さんがそう言うのだからそうしなさい。水が使えるようになってから工事すればいいじゃないの」という親御さんの意見に従い、着工スケジュールを遅らせるということで決着しました。

家づくりと親子関係は思いやりが生むトラブルが多い

このエピソードは建築を担当する会社が馴染みのない業者とのやりとりで生まれた行き違いですが、そこまで単純な話でもないと思います。

知り合いの業社を紹介した親の気持ちは、子のためにひと肌ぬぎたいというもの。
そのために知り合いを動員しますし、お金も出しますが、子どもの異論を認めるゆとりがなくなっていきがちです。

そして、自己主張できない子がいます。
別の業者に依頼するという選択肢もありましたが、M様はそうされませんでした。
波風をたたせたくないのです。

私も立派な親をもつ一人の子として共感し、同情します。

「家づくり」は親子関係を見つめるよい機会?

「結婚」や「家づくり」において、親子間には大なり小なりなんらかの対立やトラブルが起こるものです。ずっと隠れていたものが表に出てくるのだと思います。

それは親子関係を見つめ、向き合う絶好のチャンスだと考えます。

相手がどういう気持ちで言っているのかを受け止め、その上で自分達が思っているか、どうしたいのかを伝えられるのが理想です。

自分たちの将来像を伝えましょう
親の言うことを100%聞いて従うことや、逆に最初から無視して自分たちの好き勝手やることは、どちらももったいないことだと思います。

一つ信じてよいことは、ほとんどの親は子の幸せを願っているという事実です。
自分たちの将来像を親に伝え、それが自分たちにとってどんなに幸せなことであるのかをしっかりとプレゼンテーションしましょう。
感謝の気持ちがあれば、きっとわかってもらえるはずです。

どうしてもわかってもらえない場合は、それは親の問題ですから、子は気にしなくていいと思います。
私はそう思うことにしています。

  1. 「家づくり」は親子関係を見つめるよい機会
  2. 親の言うことを100%聞いて従う、親の意見を完全に無視しない
  3. 自分達の将来像を親にしっかりプレゼンテーションし、お互い理解し合う努力をする

近い関係だから何も言わなくてもわかると思いがちです。
しかし、家づくりをきっかけに近い関係だからこそ、しっかりコミュニケーションをとることの重要性がわかるのではないかと思います。

家づくりを進める全ての人が、不安と悩みを癒され、ワクワクし、願いを叶えて、愛情豊かな暮らしを手に入れるよう願っています。