間取りや仕様を煮詰める中で、特に重視したのは、『子供が安全に暮らせる家にすること』です。
家づくり当時、私たちには間もなく二歳になる息子がいました。
息子は、中等度の知的障害と自閉症という発達障害を抱えていたため、息子が安全に暮らせるための対策というのは、家づくりにおいて必須でした。
発達障害というのは、身近に該当者がいなければ、詳細は全く知らないという方も多いと思います。
言葉通り、運動や知能の面で発達の遅れがあるのはもちろんですが、問題の本質は、人とのコミュニケーションの取りづらさや、情緒の不安定さにあります。
家で生活することを想像したうえで、私たちが注目した息子の行動を具体的に挙げると、
・「危ない!」と注意しても、耳に入ってこない(人の声に注意しようとしない)ため、危ないものに突進していく
・高いところに登るのが大好きで、すぐに登りたがる(落ちるということを想像できない)
・走ったり飛んだりなど、動き回るのが好きだが、あまり前方に注意しない(前を見ていない)
などがあります。
このような特性を持つ息子が、少しでも安全に、そして楽しく暮らせる家にしたい。
そう考えた私たちは、以下のようなことに注意して家の間取りや仕様を煮詰めました。
・極力角(尖ったもの)を無くす
もっとも注意したのが、家の付属品や家具から、角を無くすということです。
前を見て歩くことが不得意な息子が、何かにぶつかっても、大きな怪我をすることが無いように、テーブルやニッチなど、あらゆる付属品の角を無くし、家具も「なるべく丸いもの」をテーマに選びました。
入居後、案の定、息子は前を見ずに歩き、付属品や備品にぶつかっていますが、大きな怪我をしたことは一度もありません。
もしも角のあるものを採用していたら、きっと怪我をしていただろうと思う行動を見るにつけ、「丸にこだわってよかった」と思うのです。
・腰壁を容易に乗り越えられない高さにする
高いところに登るのが好きな息子にとって、腰壁の高さはとても重要な決め事でした。
腰窓が、容易に登れる高さであってはならないのはもちろんですが、盲点だったのは階段の腰壁です。
住友林業の標準仕様では、二階ホールの圧迫感を軽減するため、腰壁は床から900mmの高さが標準となっています。
これは、たしかに圧迫感は無いのですが、子供が頑張れば乗り越えられる高さになってしまうので、非常に危険です。
我が家は、腰壁の高さを1000mmに上げてもらい、建築途中にチェックし、実際の高さを見て、「もう少し高いほうが安全だ」と思ったため、最終的に1100mmまで上げました。
圧迫感は、住んでみればそこまで気になりません。何より息子が安全に暮らせているので、大満足の結果となりました。
・段差を作らないフラットフロアに
最近では、LDKに段差をつけるのが流行っています。
段差のあるLDKは、子供たちのよい遊び場になるだけでなく、見た目も変わっていておしゃれなので、私たちも憧れていました。
しかし、息子の特性を考えた結果、我が家は段差のないフラットフロアのLDKを選択しました。
足元を見ることが不得手な息子にとって、安全なつくりになったのではないかと思います。
現在、我が家には、自閉症の長男と、乳児の次男が暮らしています。
次男が生まれて思うことは、長男にとって安全な家というのは、次男にとっても安全であるということです。
安全に配慮した家で、これからも二人の成長を見守っていきたいです。