味のある建物を利用したカフェや飲食店が増え、町中でも古民家人気が高まっている今。
昔は変わったモノ好きの嗜好だった古民家は、親しみやすくなり、古民家に住む=「オシャレ」なイメージになっています。
ちょっと憧れの「古民家ライフ」を実践しているのは、築100年近くの古民家で暮らすのは、フリーのデザイナーであり、インターネット通販で古道具を販売している山田さん。
古民家のある場所は名古屋駅から徒歩圏内の好立地です。
オシャレでこの古民家ライフを選んだというより、「こういう古い建物が面白いから」ということで、壁を自分で塗ったり、気に入らなかった床のクロスを剥がし、自分の好みの建材を買ってきて貼り直したり、ガラスの建具のガラスを外して障子を貼ってみたり。
不便を解決するためにどうすればいいかを粛々と考え、実行し続ける、たくましい暮らしぶりです。
そんな古民家に住む=田舎という定説ではなく、古民家カフェを開く予定もなく、都会なのに雰囲気のある建物に住む山田さんの古民家ライフをお届けします。
都会で古民家一人暮らしの家とは
まずは山田さんの古民家におじゃましました。
いきなり紺屋のようなのれんをくぐると、たくさんの古道具たち。
これはインターネット通販で販売している商品たちです。
味のある戸棚や机、机の脚を利用したテーブルなど素敵な商品が所狭しと並びます。
その裏にはデザインの仕事を行う事務所が。事務所のデスクもすべて古道具。
キッチンは元々あったガスコンロとガスオーブンを撤去し、自分で用意した1口のIHコンロを使用しています。備え付けのガスオーブンは汚れがひどく、使えるかわからないと判断して撤去しました。
こちらがお風呂で、想像以上に近代的でキレイです。
古民家のお風呂といえば、レトロ過ぎて不便なことは覚悟の上かと思えば、シャワーまでついています。
ここは増築部分なので比較的新しいんです。
最初はバランス釜だったんですけど、大工さんに見ていただいて『危ないから撤去した方がいい』とアドバイスしていただきました。
それで、大工さんに見積もりを取ったら30万!
「高いなあ」と思っていたら、東邦ガスさんが『使用して危険性のあるものは撤去できる』製品に該当するので、無料交換してもらえたので、工事費12000円だけで済みました。
しかし、お風呂場のタイルはかなり剥がれていまいた。
左側のタイルは少し色と大きさが違いますが、これが山田さんが貼り直した部分です。
担当してくださった左官屋さんはタイル張り職人でもあるので、タイル張りの道具を一式貸してくれた上に、お風呂に使われてるタイルのサイズはもう生産してないからと、似た色のタイルまで分けてくださったんです。
とても助かりましたし、自分で貼るのも楽しかったです。
そしてトイレも洋式!水回りが近代的で、住居部分が古民家という理想的な物件がこの世にあるのですね。
さっそく階段を上って2階へ。踊り場の横は寝室と、お客様が来た時用の寝室にもなる客間その2。
オシャレな雑貨も、自然に古民家に馴染んでいます。
古民家の機能性を住んで感じることもあるようで、
古民家って夏はとっても涼しいんですが、冬の寒さはとっても厳しいので、ハイパワーな石油ストーブが欠かせなかったです。
たしかに外を歩くと汗がじんわり出るような暑さだったのに、家の中に入るとひんやりと心地よい温度になっています。
そもそも古民家ってどうやって探すの?
住むなら絶対都会に住みたいし、古民家に住むと言ったらきっとみんな見たいと思うのでアクセスしやすい名古屋駅にこだわりました。
名古屋でデザインのキャリアを積んで、さらにレベルアップするため東京に転職を希望していました。
しかし古物商許可証を取り、古道具屋を始めることになり、仕入れの利便性を考えて東京行きは断念。
その代わり(?)、名古屋で一番東京に近い場所に住もうと、名古屋駅エリアに絞ったそうです。
人が集まる場所にしたかったので立地はこだわりましたし、「都会で古民家」という話題性や意外性も気にしていました。
名古屋は東京、大阪、3番目か4番目かは意見が割れますが、三大都市のひとつと言われていますよね。
きっと東京駅や大阪駅の付近に古民家はないでしょうし、あったとしてもすごく高いか、そもそも貸してもくれないと思うんです。
名古屋駅は発展している部分もありますが、徒歩圏内にまだ古い建物が残っているんですよ。
新幹線も停まるような駅が歩いて行けて、しかも古民家を借りて住めるのは、名古屋だからかなと思っています。
そんな古民家探しは、インターネットの物件サイトを見ても出てきませんし、古民家、賃貸で探しても物件が出てくることはまれ。
しかも理想とする古民家は検索フィルタで条件付けができるようなものではありません。
こんないい物件、どうやって探したのでしょう?
古民家はひたすら足を使って探すしかないですね。ここを知ったのはバーのオーナーからの情報で知りました。
この家を見つけるまで3ヶ月。その間、
最初は古民家でバーをやっている方にどうやって探したか聞いてみたんです。すると『紹介』と一言で(笑)やっぱり自分で探すしかないかーと。毎週末、古い家が残っていそうな名駅周辺の四間道、菊井町、栄生駅や中村区役所駅周辺などを実際に歩いて探しました。
カンで歩くと疲れるので、Googleストリートビューを使って予習して、改めて物件を見に行くのが効率が良くておすすめです。
空き家で、雰囲気の良い所を見つけると、飛び込みで大家さんの連絡先を聞いたりしました。
たぶん30軒以上見て回ったと思いますが、物置状態ではあるものの、ほとんどがまだ貸せないという回答が多かったです。
そんな突撃古民家探しも佳境の中、吉報が入ります。
最初に探し方を聞きに行ったバーのマスターから「うちの近所の古民家が空いているみたいだよ」という情報が。
すぐに大家さんに連絡して話をすることになりました。
大家さんは90歳を超えている方で、古民家は約20年前に住んでいた方が退去して以来、そのままになっていました。
初の内覧の時、壁はかなりボロボロでやり直しが必要でしたが、水回りが(比較的)新しい仕様で、名古屋駅からも近い。
ほとんど心が決まったものの、知り合いの建築関係の方に、電気(素人工事だったので漏電などの恐れ)と給湯(バランス釜で使えるかどうかわからない点)を、大工さんに見てもらった方がいいとアドバイスしてもらったそうです。
電気やガス周りは家の基本設備にあたる所でもあるので、大家さんに修理をお願いしましたが、内装などはは自分で行うつもりでいました。
この物件は店舗用物件なので、基本的に内装に関しては全部自己負担ですが、その代わり何してもOKという自由度の高さがあるところが魅力的でした。
まずは大工さんや左官屋さんなどを同じバーの方に紹介していただき、見積もりを取りました。
すると壁の修復はかなり大変なので全体で約50万円、床の張り替えで約15万円、お風呂のバランス釜の交換が30万と高額な見積もりがやってきます。
しかし、提示された家賃は8万円(消費税別)とかなりお高め。
古民家は古い=安いわけではありません。
店舗用物件としても需要があり、賃貸を募集すればすぐに埋まってしまう人気物件なので、当然家賃も強気の価格です。
この長屋で店舗を営む方にも話を聞いているので、なるほどなという家賃でした。
せめてお風呂くらいなんとかしてくれないかなと思って、大家さんに相談すると冷たく一蹴。
人気の家なので他にも借りたい人がいるので、嫌なら良いよと(笑)。
せっかく見つけた古民家ですし人に譲るのはどうかなということで、その条件で承諾しました。
ちなみに、大家さんは畳の張替えはやってくださいました。
家賃86400円、リフォーム代プラスαで古民家ライフが始まりました。
次回は山田さんのセルフリフォームを詳しくご紹介します。
山田さんの古民家の費用
家賃86400円
保証金 6ヶ月分(事務所、店舗と事業用の条件)
■リフォーム代
壁の修復 約57万円(左官屋さん)
リビングの床の張替え 約15万円(大工さん)
自分で行うDIY道具 約10万円
バランス釜の撤去と湯沸し器設置 1.2万円
■物件探しの期間
3ヶ月で30軒
自分の足で探すのとグーグルストリートビューと口コミで探す