Categories: 富士山と生きる おばあちゃんの知恵

大大家族の里芋たち。一株から45個の親芋、小芋、孫芋が現れる!

こんにちは。
クラッソーネライターの豊田有希です。
富士山と生きるおばあちゃんの知恵では、山梨県巨摩郡身延町に住むおじいちゃん、おばあちゃんの暮らしの知恵を毎月紹介しています。

第25回の9月(長月)。
9月に入ると暑さは和らぎ雨の日が多くなりました。
取材した9/23時点で身延町は9月は数日しか晴れ間がなかったそうです。
9月と言えば、実りの秋を感じる頃。
実りの秋といえば、稲穂が垂れて、稲刈りの季節を迎えます。
雨ばかりが降る中で、晴れ間を待ち望みながら天気予報とにらめっこするような日々が続いていました。

なんと45個も?!里芋堀をしました。

先月号で紹介した物語のような里芋畑。
おばあちゃんにお願いをして、一株掘らせてもらいました。
こんなに大きな葉っぱの根元についた里芋がどうなっているのか、知りたいですよね?

どれくらい大きいかというと、傘になるくらいの茎と葉っぱです。
おばあちゃんと並んで写真を撮ってみました。この里芋の葉っぱにまあるい朝露がたまりますよね。
おばあちゃんが子供のころはこの「露」を七夕の時、願い事を短冊に書くときにすずり用のお水代わりに使ったそうです。
なんてロマンチックなんでしょう・・・。
願い事はかなったのでしょうか・・・?

芋を掘ると聞いて、私はこの茎を引っこ抜くのかと思っていたのですが、おばあちゃんが手にしたのは鎌でした。
「掘りにくいでしょう」とサクッとあっという間に茎を切ってしまいました。

そして、土の中の芋を傷つけないように、周りを気をつけながら掘って、抜いてみました。
おばあちゃんが手にしているのが「里芋」ですが、根っこと土がついているのでまだ何個ついているのか、どうなっているのか正直わかりません。

私が代わりに持ち上げてみると、こんな感じ。
これでもまだわかりませんが、土のついた部分に沢山の里芋がくっついています。
里芋は植えた種芋の上に親芋が育って、その周りに子芋や孫芋がつくんです。
おんぶにだっこのような格好でくっついています。
この後、土を落として、かたまった芋を手で外すようにして収穫していきます。
外すときにパキン、パキン、と音がします。
実は、里芋の芋の部分は「根」ではなく「茎」の部分が肥大したものなんですよ。
みなさんご存知でしたか?

そして、収穫した里芋はこちら。
ここからがまだ大変でした。

野菜がきれいな状態になるまでにはかなりの手間が・・・

掘った、わーいと思った私でしたが、スーパーで見る「里芋」の姿になるまでにはまだまだかなりの手間がかかりました。
途中でめげそうになりましたが、写真で紹介しますね。

おばあちゃんが取り出してきたのが「昔の洗濯板」です。
バケツに山から流れてきている水を入れて、真ん中あたりにこの洗濯板を入れたら、ガシャガシャガシャと手前に奥にと動かしして、バケツの中で流水を作ります。
手動の洗濯機をバケツの中で作っているイメージです。

ある程度やったら水を入れ替え、それを何度も何度も繰り返し・・・5回くらい繰り返していくと、だんだんと里芋についていた泥が取れてきたようです。

ヤッターこれで終わりかな?と思いましたが甘かったです。
このヒゲのような根っこを手で取っていきます。
こんなに沢山根っこがついています・・・。

そしてようやくスーパーで見かける里芋の姿に。
土の中からこれが出てくるかと思ったら大間違いでした。
農家さんがきれいにしてくれているんですね。
いやいや、食べるまでには意外と手間がかかります。

ひと株の根を掘ったら、なんと里芋が大中小あわせて45個もでてきました。
小さいのは塩茹でにするといいそうですよ。
大きいのは煮物でしょうか。

作業を終えて「お茶にしよう」とおばあちゃんが出してくれたのが、里芋とちくわの煮物。
ぬめっとした食感もありながら、やわらかさもありつつ、しっかりとした食感。
もう一個、もう一個、と箸が進む美味しさでした。

おばあちゃんと楽しく里芋堀をしていたところに、おじいちゃんが田んぼの作業を終えて登場。
「青ゆずもっていくかい?」とすかさず高バサミを持って、ゆずの木へ。

あっという間にバケツにいっぱいのゆずを取ってくれました。
近づくとフレッシュなゆずの香りがして、思わず「お風呂に入れたい!」と言ってしまったのですが「もったいない!」とつっこみが入りました。

この時期のゆずは皮を薬味に使うそうです。
ゆず胡椒を作ることもできるのですが、沢山の青ゆずから手間をかけて出来上がるのはほんの少しなんですよ。

お彼岸には3種類の手作りおはぎを

お茶のお供に・・・「お彼岸だからおはぎをつくったわよ」と持ってきてくれました。
あんこ、ごま、きなこの3種類のおばあちゃんの定番おはぎです。
おじいちゃんはあっという間に、ペロリと3種類を食べてしまいました。

お彼岸に食べる「おはぎ」

大豆の赤い色には魔よけの効果があると昔から言われていて、邪気を払う食べ物として供えられてきたそうです。
そしてかつては高級品だった砂糖をつかったあんこを合わせて、ご先祖様と私たちの心を合わせる、という意味もあるそうです。
時代が変わっていくなかで、おはぎを手作りするおうちは減っていると思うのですが、今も受け継いだおはぎを作っているおばあちゃんの丁寧な暮らしは、心を暖めてくれます。

おばあちゃんの9月のお花畑

白い彼岸花。
めずらしいですね。
ちょうど山梨では稲刈りの時期になると、赤い彼岸花が道路わきに沢山咲いています。
おばあちゃんの家では山に続く小道の脇が「彼岸花ロード」になっていました。

四葉のクローバーのような形をした紫の葉っぱが印象的なお花。
葉っぱの下側には小さな白いお花が一杯さいています。
まるで顔を出しているようです。

左の白い花は「ある野菜」の花。
匂いをかぐとわかるのですが、ニラです。
右はベビーマラカスというそうで、緑の袋の中には小さな豆が入っているそうです。
乾燥させると黒い実が収穫できます。
種を振ったら小さな楽器・マラカスになるそうです。

左の紫の小さな実が沢山ついたものは、ムラサキシキブと呼ばれる樹木。
昔から日本に自生していてこの紫の実は観賞用に使われているそうです。
右はカクトラノオというお花で、特徴は茎が四角なんです!
普通は丸い茎がほとんどですが、触ってみると確かに四角い!!!
植物って不思議ですね。

秋の畑は新旧交代ムードです

夏野菜も最盛期は終わったものの、まだなす、トマト、オクラなどの実がなっていて、食卓の主役になっているようです。

そして、冬に向けてキャベツ、大根、白菜などの野菜がまかれていました。
冬にはきっとこちらの野菜が主役になりそうです。

今の旬は、落花生。
おばあちゃんから借りている畑でできた落花生。
皆さんは、落花生は土の中にできるって知っていますか?
あの実は、花が咲き、根元が延びて地中にさやを作るので、「落花生」と言うそうです。
収穫は土を掘るんですよ。
掘ったばかりの新鮮な落花生は「茹で落花生」にしておつまみにすると最高です。

編集後記

おじいちゃんのお庭に並んでいた小さなほうき。
これは手作りのほうきで、植木の選定をした後の葉っぱを集めたりするのに使うそうです。
もちろんおじいちゃんの手作りです。
竹の枝を切って作ったそうです。
なんでも、作ってしまうおじいちゃんの職業はなんと呼べばいいんでしょう・・・!

豊田有希

1975年大阪生まれ 小さな頃は「芋掘り」が大好きなやんちゃな女の子。 1997年一部上場企業へ就職し、2016年3月に退職するまで19年勤務。 2010年田んぼできずなづくり事業を山梨県身延町でスタート。 翌年一般社団法人風土人を設立。代表を務める。偶然か必然か名前の漢字は、「豊」かな「田」んぼに「希」望が「有」る。 好きを仕事に生きていく。

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Published by
豊田有希
Tags: 里芋身延町お彼岸おはぎお花

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