こんにちは、クラッソーネライターの豊田有希です。
富士山と生きるおばあちゃんの知恵では、山梨県巨摩郡身延町に住むおじいちゃん、おばあちゃんの暮らしの知恵を紹介しています。
第14回の10月(神無月)は「お米の収穫から脱穀と絶品・栗の渋皮煮」をご紹介します。
前回の5月はお田植えを紹介しましたが、5ヶ月たった田んぼは稲刈り・そして脱穀の季節を迎えています。
おじいちゃん、おばあちゃんは、私たち”田んぼできずなづくり(耕作放棄地を活用したお米づくり体験プログラム)”のお米作りの”先生”なんです。
お二人とも、いつも素敵な笑顔で私たちを迎えてくれます。
5月に田植えをした苗は成長し、
実がたわわにつきました。稲の上にはトンボがどこからともなくやってきて、飛んでいます。
田んぼの脇にはコスモスも咲いていて、秋だぁ~と感じるひとときです。
お米は稲刈りをしたら、私たちは「うし」と呼ばれる干し場に2週間干し、天日乾燥させます。
天日干しは、機械乾燥とは違いお日様の力を借りて少しづつ水分量を落としていくので、美味しいといわれています。
この天日干しの風景はこれぞ日本の農村風景、という光景ですね。
そして約2週間をかけて乾燥させたら脱穀をします。
お米を「籾」の状態にする作業です。
写真は「足踏脱穀機」。
人が踏板を踏むとこぎ胴が自動的に連続回転するように工夫されている機械です。
この足踏脱穀機が発明されたのは明治末期と言われていて、かつてよく使われていました。
今はさらに機械化され、人の足ではなく、モーターやガソリンエンジンによってこぎ胴が動くものになっています。
足踏脱穀機。
文明式と書いてあるところが当時は画期的な発明だったことを物語っているようです。
脱穀が終わると「籾」の状態になります。
おじいちゃん、おばあちゃんやこの地域の方達は「籾」の状態で保管をし、食べるときに籾から白米に精米をして食べるのが普通です。
予め白米にしてしまうと、乾燥が進んでしまうからです。
そして、もうひとつの理由は、”精米したて”のお米がとても美味しいから。
収穫したお米を一年間大事に食べるために、保管する籾は脱穀した後に、天気のよい日に家の前でビニールシートを敷き、2日間ほどさらに天日乾燥をさせるそうです。
とても手間がかかっていますね。
田んぼの作業の合間にはおばあちゃんがこの時期の身延町の特産、あけぼの大豆の枝豆とトマトを持ってきてくれました。
この枝豆については、こちらの記事で紹介しています!
「1年で3週間程度しか食べられない「あけぼの大豆」と、ご飯にあうししとうの佃煮レシピ」
端っこを切ると茹でた時に塩が中に入って美味しいんだそうです。
おばあちゃんの職場は徒歩30秒の”自家菜園”。
ここで野菜はほぼ自給自足されています。
そこに新たな助っ人が登場していました。
ん?昔ながらのカセットラジオ。
すごく大きな音でラジオを流していたので、不思議に思って聞いてみたら、「猿よけなの」ということでした。
いわゆる「かかし」の役割ですね。
おばあちゃんの菜園は、山がすぐ側にあるので、自家菜園は鹿、猿などに狙われています。
夏には楽しみにしていたトウモロコシのほとんどを猿に食べられてしまったそうで「人の声がしない時に猿はやってくる(=賢い)」から、こうしてラジオの音を流して人がいるように見せかけているんだそうです。
まさに人間と猿の知恵比べです。
おばあちゃんの職場にはたくさんの秋・冬野菜が植わっていました。
スティックセニョール、水菜、小松菜、大根、2色のにんじん、白菜、チンゲン菜などなど。
もう冬の鍋野菜は困りそうにありません。
そして夏にたくさん実をつけてくれた、ナス、オクラ、ピーマン、ししとう。
おばあちゃんは新しい種や苗を見つけては、初めての野菜づくりにもチャレンジしています。
若々しさの秘訣は、新しいことに常に挑戦している、ということなのかもしれません。
今回は大きくならなかったそうです。にんじんの匂いがしましたよ!
白菜は真ん中が丸まり始めていました。
こんなに大きいサイズなんですよ。
畑が30秒のところにあれば、食べるときに収穫していつでも新鮮なものを食べることができます。
そしてたくさんとれた白菜や大根は漬物として保存食・発酵食に。
新鮮な野菜や発酵食は健康の秘訣のような気がします。
オクラのお花がかわいいのよね、とわざわざ教えてくれました。
最近は天ぷらにしているのも見かけるようになりましたよね。
(収穫した小松菜と一緒に)
おばあちゃんお手製のヨーグルトにはきなこと先ほどのミニトマトで作ったトマトのジャムがのっていました。
「たくさんトマトが採れたからジャムにしてみたの」というおばあちゃん。
トマトジャム、とっても美味しかったです。
作り方は簡単で、洗ってつぶし、砂糖と塩少々を入れて煮詰めたそうです。
皮も種もとらずにそのままで。
色もきれいですし、甘すぎなくて美味しかったです。
そして、去年も頂いた「栗の渋皮煮」。
とーーーっても美味しかったです。
立派な栗が手に入ったので、これを普通に食べたらもったいない、渋皮煮にしよう!
と思い立ち、美味しい渋皮煮を作っている友人に電話をして作り方を教えてもらったそうです。
中を開けるとホロホロとした実が現れます。
一粒で至福を感じるような時間でした。
栗の渋皮煮ってなかなかチャレンジしないと思いますが、作り方を聞いたので記載しておきます。
とっても手間がかかります。
それに挑戦しようと思うおばあちゃんがすごいなぁと思いました。
おばあちゃん曰く、「手間と時間がかかるから”雨の日の作業”のような感じね」と言っていました。
私も大きな栗を手に入ったら、雨の日に、作ってみたいと思います。
分量
やってみないと細かいところはわかりにくいかもしれませんが、機会があったらこのレシピを参考に自分なりの渋皮煮を作ってみてください。
おじいちゃんの日課は、午前中は外で田んぼや家の周りの木々の整備などをすること。
冬が近づくと炭焼きも始まります。
家にはお昼ごろに帰ってきて、午後はゆっくりして、夕方二人でウォーキングにでかけます。
雨の日を除いて毎日1時間ぐらいウォーキングをしていて、そのための体力を残すように一日の働く時間を決めているんだよ、と教えてくれました。
やりすぎない、ということが大切のようです。
そんなおじいちゃんの気分転換は「着替え」。
1日に4回ぐらいは着替えることもあるそうです。
そういえば、田んぼで会うおじいちゃんと、家で会う時とでは、ぜんぜん雰囲気が違うのですが、着替えることで「モード」を切り替えているようです。
田んぼにいるときや外で作業をしているときは、しゃきっとしていて、家で寛ぐ時はおもっいっきり寛ぐ。
着替えたら、気分が変わるんだよ、とおじいちゃん流の気分転換を教えてくれました。
おじいちゃんが道に落ちていたからと持ってきてくれた「あけび」。
この時期に山になる果実で、厚い果皮と、中に種と共に白いゼリー状の果肉が入っていて、熟すと紫色になった果皮がぱっくりと割れて中の種が顔を出し、この時が食べごろとなるようです。
中には種がいっぱい入っていて、これをさけながら食べるのは大変です。
ほのかな甘みが昔は山で遊ぶ子供たちのおやつだったようですが、今ではあまりみかけなくなりました。
この皮の部分も食べれるようで、東北地方などでは炒め物、揚げ物などで食卓に上がるそうです。
そんなあけびがおばあちゃんの家の玄関に季節を感じるオブジェとして飾られていました。
都会で暮らしていると季節を感じることが段々と薄れていきますが、おじいちゃん、おばあちゃんの暮らす山梨県身延町ではまだまだ季節を感じる暮らしが残っています。
ちょっとした季節の変化を楽しむ暮らしは、その変化を見つける喜び、毎年同じではない自然条件の元で自分たちが工夫する喜び、そして生きていることを実感する喜びがつまっているような気がします。