こんにちは。クラッソーネライターの豊田有希です。
富士山と生きるおばあちゃんの知恵では、山梨県巨摩郡身延町に住むおじいちゃん、おばあちゃんの暮らしの知恵を紹介しています。
第9回の1月(睦月)。
小正月(1月14日~16日)には、全国的に「どんと焼き」が行われていますが、皆さんの地域ではどうでしょうか?
この写真はおじいちゃん、おばあちゃんの住む身延のどんと焼きの写真です。
どんと焼きとは、小正月(だいたい1月15日が多いです)にお正月飾りや書き初めなどを持ち寄って燃やすことはです。
なぜ行われているかというと、お正月に門松やしめ飾りなどでお迎えした歳神様を、炎とともに見送るためなんです。
昔は神社で行われていて、今も神社や、地域によっては集落単位で続けているところもあるようです。
呼び名も「どんと焼き」、「どんどん焼き」と言ったり、地域によって様々な呼ばれ方をします。
どんと焼きの火でお餅やお団子を焼いて食べると虫歯にならないと言われたり、書き初めを燃やして高く火があがると字がうまくなるなど、縁起の良い行事です。
子供のお祭りとされているので、過疎化が進む地域でも小さな子供が参加する貴重なお祭り。
おじいちゃん、おばあちゃんの集落では今年は子供たちは部活などで参加できず、大人だけのお祭りになったようです。
おばあちゃんは「道祖おじさん」と言っていました。
毎年、小正月が近づくと、いつもはひっそりとしている道祖神が竹や和紙で飾られます。
この飾りも地域や集落によって違いがあります。
道祖神の前に置かれているのはお供えが入った箱。
昔は子供が生まれた時や結婚した時など特別な時に供えていたそうですが、今では家の「屋号」を書き各戸からお供えをして、どんと焼きの後にお下がりを分け合うそうです。
カップラーメンが多いのは、非常食になるからという心遣いかもしれません。
どんと焼きでは「3本に枝が分かれている樫の木」に手作りのお餅をつけます。
アルミホイルを巻いて焼いて食べるそうです。
おじいちゃん曰く、このきれいに3本に分かれている樫の木の枝を見つけるのが大変で、もう来年の分の場所をチェックしておいたそうですよ。
そして、おばあちゃんはこの小正月に合わせ、その前日に、赤、緑、白の3色のお団子を作って小さな樫の木の枝につけたものを10本以上用意し、家の中のお仏壇、大黒さん、お米の蔵、車の車庫、そしてお墓などに飾るそうです。それがこちら。
家族の干支(申、辰、酉など)も粘土細工のように作って、こうして一緒に樫の木に飾るそうです。
こうして家に飾られたお団子は、16日の風にあてないようにしまい、20日に煮て食べるという習わしがあるそうです。
取材に伺うと、白菜が干されていました。
こうして2日ほど天日に干した白菜を漬物にするというので、見せていただきました。
8等分した白菜に、さらに半分に切込をいれた状態で漬けます。
白い茎の部分に切込を入れておけば、樽から取り出す時に包丁を使わずに食べたい分だけ切れます。
ちょっとした知恵ですね。
白菜漬けは、2段階に分けて漬けるそうで、今日はまず白菜を塩漬けにします。
樽の底面に塩をひき、白菜を並べますが、この時に白菜の方向を互い違いに並べていきます。
互い違いに並べることで隙間をなくしていくんです。
一列白菜を並べたら、その上にまた塩を振り、今度は白菜を横向きに並べて行きます。
この時も向きを互い違いにしながら隙間なく、キュッキュと手早く詰めていきます。慣れた手つきであっという間です。
「もうこんなことしている人、田舎でも少なくなったのよね」なんて言いながら。
こうして白菜が詰まったら、その上に大きなビニールと新聞紙を敷いて、「自分の体重」という重しを乗せます!
「水分を早く出すことが、美味しい白菜漬けの秘訣」とおばあちゃん。
足踏みをして塩を白菜になじませます。
こうすることで、白菜の中の水分を早く出せるのです。
踏み終わった白菜はすこししんなりして、塩がいい加減に馴染んだようです。
そして、この上に重しを乗せて翌日の夜から翌々日の朝までおいておきます。
そうすることで、白菜から水が徐々に上がってくるのです。
水が上がった後は、水を捨て、昆布、唐辛子、みじん切りのにんにく、けずり粉を入れてさらに漬けます。
この時、味見をして塩気が足りなかったら塩を足すそうです。
こちらが2段階目の白菜。
出来上がるとこんな感じになります。美味しそうですね。
先月号でおじいちゃんの炭焼きを紹介させていただきました。
定年後にはこんなエコな暮らしをしたいなんて声もいただきました。
その炭焼きの副産物で美味しいおやつも自動で作っていました。
それはこちら。
ほくほくの焼き芋です。
実はこの焼き芋、炭焼きの時に沢山でる「炭のかけらと灰」を使って作るんだそうです。
この中に入れておくだけで「自動」でできる焼き芋。朝入れて2時間くらいおいておき、お昼ご飯後のおやつにしているそうですよ。
さつまいもが焦げないように濡れた新聞を巻き、上からアルミホイルをかぶせるそうです。
そしてこの炭のかけらは、火鉢でも再利用されています。
年代物の火鉢ですね。
出来上がった焼き芋が、冷めないようにと保温するのに使われていました。
いつもはこの上にお鍋を乗せてお湯を沸かして、お掃除やお皿を洗う時に使っているそうです。
「いつもお湯が湧いているから便利よ」と教えてくれました。
そして、今日は秋に畑で採れた落花生をフライパンで炒ったものを出していただきました。
殻のまま炒ったものを食べるのは初めてでしたが、香ばしさがあり美味しかったです。
そして今日もおやつをいただきました。
自家製のたくわん漬け、ゆずジャムときなこを乗せたヨーグルト、ゆずジャム乗せクラッカー、焼き芋です。「お芋と漬物が合う」と田舎の人はよく言うそうです。
たくわんはちょうどいい塩梅のものを樽から出していただいたのですが、それがこちら。
サメが口を開けているかのような大根の形でした。
スーパーで並んでいる野菜は選別されているので、整った形のものがほとんどですが、大根も人参もいろんな形ができるので、面白いですね。
おじいちゃんとおばあちゃんは本当に働きもので、この冬も風邪をひいていないそうです。
いつ伺ってもお元気で、晴耕雨読な生活を送られています。
そんなお二人の健康の秘訣はもしかしたら自家製ヨーグルトなのでは?と思っています。
毎日欠かすことなく食べているのが自家製のカスピ海ヨーグルトで、きなこと自家製の季節のジャムを乗せて毎朝食べています。
一度だけ菌をもらって作り始めて15年間続いているそうなので、驚きです。
毎日夕方にお二人で散歩を続けているのもそうですし、体にいいと思ったことをコツコツとやり続ける大切さを見せてもらっているような気持ちになりました。
今後もお二人の健康の秘訣を見ていきたいと思います。
「夏下冬上(かかとうじょう)」
おじいちゃんと炭の話をしている時に教えてもらった言葉です。
炭を起こすときには、夏は火種を灰の下に冬は火種を灰の上に置くとよく火がおこるそうです。夏と冬では火の起こし方が違うということですね。
キャンプ場やBBQで火を起こす時にこの言葉を覚えておくと便利かもしれません。
この写真はおじいちゃんの炭をつかった炭こたつの中です。
灰の中から炭を見せてくれました。
おじいちゃんは、冬の間は炭焼きを2日に1回のペースでやっていて、家の裏の倉庫には出来上がった炭が3年分位置いてありました。
そんなに在庫があるのにどうして続けているんですか?と聞いたところ「冬にやることが限られているのと、家の周りの古い木の枝を切って活用したいから」と。
炭が足りているから働かないで休む、ということではなく、古い木の枝があるのだから、いつかのために備える。
まさに備えあれば憂いなしです。
私のようにテストの準備を前日にやるタイプの人からすると、とっても頭が下がります。
一日一日を丁寧に過ごす、そんなお二人だからこそ、健康であり続けるのかもしれませんね。