こんにちは。
クラッソーネライターの豊田有希です。
富士山と生きるおばあちゃんの知恵では、山梨県巨摩郡身延町に住むおじいちゃん、おばあちゃんの暮らしの知恵を毎月紹介しています。
第32回の5月(皐月)。
5月中旬になり、約1ヶ月ぶりに訪れたおばあちゃんの家は、真夏の日差し?と思うほどの暑さです。
到着早々、「暑いからまず中に入ったら?」とおばあちゃんに言っていただきましたが、たくさんの野菜たちが元気に育っている様子が見えたので、先に自家製農園の野菜の成長を見せてもらいました。
とはいえ、立っているだけで汗が滴り落ちる日差しです…!日差しの強さが年々強くなっている気がしますね。
おばあちゃんが一生懸命手入れしている自家製農園は、これから収穫ラッシュが始まります。
こちらは「こかぶ」。
直径5〜8センチほどで収穫される小さなかぶのことです。
かぶの中で最も一般的な種類だそうなので、私たちがスーパーでよく見るかぶですね。
サラダや煮物などいろいろな料理に使えて、特に春に収穫するこかぶは柔らかいそうです。
土の上にポンと乗っているような姿がなんとも言えない可愛さです。
葉っぱも浅漬けにしたり、塩昆布と一緒に炒め物にしても美味しく頂けます。万能ですよね。
こちらのモサモサした葉っぱは、ジャガイモの葉っぱです。
おばあちゃんは数種類のジャガイモを育てています。
「もうすぐ食べられそうだから掘ってみようか?」と掘ってくれました。
まだ小ぶりですが、可愛らしい形。
土からゴロゴロと出てくる姿は何度見ても嬉しくなります。
キタアカリはホクホク系ジャガイモとして人気の品種で、男爵イモの系統。
男爵イモよりも甘くてホクホクしているそうです。
水気が少ないので、ポテトサラダや粉ふきいも、じゃがバターにぴったり。
右側のメークインはねっとり感が特徴で、おばあちゃんはよくポテトフライにしていますよ。
おばあちゃんたちも、試し掘りした小さなキタアカリをさっそく茹でて食べたそうです。
その時のコツは、まず水から茹でること。
水には塩をひとつまみ入れて、ジャガイモに少し包丁で切り目を入れること。
そうすると塩味がジャガイモにしみるそうです。
シンプルだけど、新鮮なじゃがいもの旨味をダイレクトに感じられるいちばんの食べ方ですね。
こちらもぐんぐんと成長しています。
スナップインゲンはもうすぐ食べ頃を迎えそうです。
採りたてはとても甘くて、スーパーで買って食べるのとは全然味が違うんですよ。
手で一つ一つ収穫するのはなかなか大変な作業です。
こちらもそろそろ食べごろですね。
この玉ねぎは双子になっているようです。
お庭に野菜があるので、「ちょっと葉野菜が足りないな~という時には畑に行って、収穫して食べるのよ」とおばあちゃん。
なんて贅沢!家の前から採ってすぐ食べる、どこで買うよりも新鮮ですよね。
美味しくないわけがありません!!
この写真は両方ともキャベツなのですが、右のキャベツは虫に葉っぱを全部食べられてしまったそうです。
こんなに綺麗に食べ尽されてしまうんですね!よっぽど美味しかったのでしょう…。
植える時期がちょっと違っただけなんだそうです。
おばあちゃんほどのエキスパートでも、野菜づくりは失敗と成功の連続なんですね。
さて、こちらはこれから成長する夏野菜たち。
芽を出したばかりの里芋(左)とパプリカ(右)。
この2種類に共通することは、、、猿に食べられない(…はず)ということです。
お猿さんの好みって何なんでしょうね?パプリカなんて甘くてジューシーで美味しいのに…?
なので、おじいちゃんお手製の金網のハウスの外にどちらも植えてあります。
お次は秋の収穫へ向けての準備をご紹介。
田んぼの脇の花桃の木の木陰に何やらネットが張られていました。
近くに行ってのぞいてみると、あれ、これはミョウガ?
おじいちゃん、これってミョウガですか?
そうだよ。ミョウガ竹って言うんだよ。秋になったら花が咲き、あのミョウガが食べれるよ。今もこの状態で先(土に近い部分)のところが食べれるよ。
日陰で育つものなの?
そうだよ~
私たちが一般的に食べているピンク色がかったあのミョウガは花のつぼみなんだそうですよ。
しかも花のつぼみの旬が秋だなんて知らなかったなぁ。
そうめんや冷ややっこと一緒に食べるので、「夏野菜」のイメージがありましたよね。
おじいちゃんとおばあちゃんのところへ来ると野菜の旬がたくさん学べるので、野菜の美味しい時期を知ることができて助かっちゃいます!
夏野菜の代表と言えば、トマト。
上の写真が育成中のトマトです。
おじいちゃんが用意してくれた小さな竹の棒が支柱のかわりにたくさん刺さっています。
ここをつたってトマトの茎が伸びていくんですね。
皆さんは、トマトを甘くするコツを知っていますか?
それは、お水をあまり与えず、乾燥気味に育てることです。
お水を必要最低限しか与えないことで、トマトは生きようとして養分を集めて、あまーいトマトができるんです。
トマトの原産地がアンデス山脈で、乾燥地帯の出身であることも関係しているようです。
日本にはヨーロッパ経由で伝わってきて、今は私たちの食卓には欠かせなくなりました。
そしてもう一つトマト作りに大切なのは、雨が直接トマトの実にあたることで実が割れてしまわないように雨よけカバーをつけること。
それほどトマトは繊細なんですね。
おばあちゃんの畑では、おじいちゃんによる「トタン屋根」がきちんと設置されています ↓↓
いつもおばあちゃんの仕事のそばには、おじいちゃんの手仕事があります。
そしておじいちゃんの食卓にはおばあちゃんの手料理が。
お2人の連携プレーによる自給自足生活です。
素敵ですよね。
この季節の畑のおやつは、いちご。
猿から逃れて収穫できた貴重ないちごをおやつにいただきました。
?!(想像した味と違う…)ちょっと酸っぱい、かな…?
そうなのよ~おじいちゃんにあげたら『俺はいいよ』って言われたの(笑)
そうですね…(笑)
でも、小さいから砂糖を混ぜてスプーンで潰して簡単ジャムにしてヨーグルトに乗せて食べてるのよ。
それならおじいちゃんも大丈夫ですね。
せっかくの収穫物ですから、食べられるものは無駄にせず美味しく工夫して頂くことこそが自給自足ですよね。
畑を取材していたら、どこからかとてもいい香りが。
これは何の香りですか?
あら、気付いた?ゆずの花が咲いているのよ。来てみて。
わぁ!可愛い~
おじいちゃんが、『ゆずの花が咲いてるよ』って教えてくれたの。
おじいちゃんが先に気づいたんですね!
そうなのよ(笑)
黄色いゆずの実からは想像していなかった白いお花でした。
木の内側に咲いているので、木の下から上をみるとお花がいーっぱい。
花言葉は「健康美」「けがれなき人」。
ゆずのあの香りではなくて、ジャスミンの花の香りにも少し似ているような気がしました。
皆さんも見つけたら香りを確かめてみてくださいね。
ハチたちもゆずの花の蜜を吸いに来ていましたよ。
ここからは、おばあちゃんのお花畑レポートを。
上は、白いタンポポ。
珍しい品種です。
言われてみれば、白いタンポポなんて見たことないですよね。
花が咲いているものがなかったのですが、おばあちゃんが開いて見せてくれました。
花言葉はとても珍しいことから、「私を探して。私を見つめて」だそうです。
ロマンチック!
これは日本シャクナゲ。
ゴージャスですよね~。
シャクナゲは美しく豪華に咲き誇ることから、花言葉が「威厳」や「荘厳」と言われているそうです。
このシャクナゲはおばあちゃんが贈り物でいただいたものだそうです。
お花好きなおばあちゃんのところには、いつもお花が呼ばれてやってきます。
大切に大切に育ててくれるので、おばあちゃんのところにやってきたお花も幸せですね。
おばあちゃんが「これ、見てみて~」と教えてくれたのは、、、「小判草」(コバンソウ)。
イネ科の植物で、形が小判に似ていることからコバンソウと呼ばれているそうです。
実が稔ってくるとなんと黄金色になるそうです!
とっても縁起が良さそうなので家に持って帰らせていただきました(笑)
5月と言えば、日本列島ではお田植えの季節です。
田畑のある地域を車で走っていると、乾いていた田んぼにドボドボと水を張っている様子がよく見られますね。
おじいちゃんが指導している田んぼでは、5月25日が田植えの予定日。
準備万端と思っていたら、、、なんと田植え4日前に大雨(嵐?)が。
山梨ではかなり降ったようだったので心配していたら、その日の午後に送られてきた写真に絶句…
田んぼの脇の山の小さな沢(普段はほとんど水が流れていない)からおそらく以前から溜まっていた倒木や岩などが急激な水に流されて落ちてきたらしいということがわかりました。
人災はなかったということで一安心でしたが、田んぼを鹿から守る金網の柵も流され、数枚が使い物にならない状態になっていたそうです。
人力では何とかなる量ではないと、地元の方々が尽力してくださり、機械で撤去作業をしてくれるとのことでした。
そうは言っても、4日後にお田植えを控えた田んぼ。
田植えをするためには、この木材を撤去した上で、代掻き(しろかき)(水が入った田んぼを耕し、高さを水平にする作業)をしなければならないけど、こんな状態で大丈夫なのだろうか…と心配していました。
ところが!!
なんとなんと、翌日から2日がかりで撤去作業が行われ(なんて早い!)、私たちがお田植えに田んぼに着いた時には、「何事もなかったかのように」柵まで新たに設置してくれていました!!
おじいちゃんを始め、地元の皆さんのご尽力で一枚の田んぼをのぞいて無事にお田植えができました!
本当に頼もしいです。
今年も一列に並んでお田植えを行いました。
トラクターで植えるのも手間が無くていいですが、町のみんなでこうして年に1度の恒例行事として手でひとつひとつ植えていくのって、とても楽しい!
自分の植えた苗が収穫に向かってすくすく育って、新米として美味しく食べられるのは農業の醍醐味ですね。
田植え当日は「今年初の本格的な暑さ」で、うだるような暑さでしたが、午後からは気持ちの良い風が吹いて、予定の枚数を終えることができました。
この日は日曜日ということで畑仕事はお休みデー。
夏日が続きそうなので扇風機を出してみたら壊れていたらしく、おじいちゃんは扇風機を直していました。
扇風機の修理ですか?なんでもできちゃいますね!
ノーベル賞をとった山中教授もノーベル賞の受賞の電話を受けた時に洗濯機の修理をしていたんだってね。俺も同じだよ〜(笑)
本当におじいちゃんは何でもできちゃいます。
いつも静かにさりげなーくやっているので、時々気づかない時があるほど(;^ω^)
壊れてもすぐに新しいものを買わずに、自分で直しながら最後まで使い切るというのも自給自足生活において大切なことですよね。
この写真は、田んぼから水を出す出口をあっという間に作ってしまった現場です。
田んぼには水の“いりみのぐち”(入るところ)と“しりみのぐち”(出るところ)が両方必要なんだそうで、土を掘って中にパイプを入れて、足で上からトントンと押さえてササっと作ってしまいました。
お田植えの話をしていたら、昔はみんな朝が早く、集落中で4時や4時半から田植えをして、競い合ったものだよ、という話になりました。
おじいちゃんとおばあちゃんの家は、集落の中ではかなり高い山の上にあるのですが、おじいちゃんのお母さんが健在だった頃は、集落の男衆が野良作業を終えて、お茶を飲みに坂を登ってきたそうです。
お茶やお茶うけを出してみんなを毎日もてなす女性陣も大変ですよね。
おばあちゃんはそんなお姑さんの姿を見ていらっしゃったからでしょうか。
いつも私たち訪問客にお茶と手作りの佃煮やお手製ジャムが乗ったヨーグルトを出してくれます。
昭和30年代には30軒ほどが田んぼを持っていたこの地区。
今やお米を育てているのはわずか3軒になりました。
空き家も増えて、しかも1人暮らしや2人暮らしの家が多く、3人以上で住んでいる家はわずか。
昔のように坂を上がって足繁くお茶を飲みに来るのは、いま私くらいでしょうか(笑)
そんな過疎化が進むこの町でも、こうしてみんなで一緒に田植えをする行事が残っているのがとても素晴らしいですよね。
自給率がどんどん下がってきている日本、おじいちゃんおばあちゃんのような存在は本当に貴重です。