現在家を建てているご夫婦に密着する『実況家づくり』。
今回はまだ建築計画をこれから決めてくという、林勇さん一家に密着します。
お二人は2015年8月に結婚した結婚1年目のご夫婦で、現在は実家目の前の新築のアパートに暮らしています。
富山県といえば、持ち家率が全国1位と、マイホームに関して関心の高い場所。
お二人も生まれた時から戸建てに住み、今年1月からマイホームを検討しはじめました。
しかし、2016年8月現在、まだ家は着工していませんし、間取りも決まっていません。
それは間取りの計画でご両親と奥さまとの意見が一致せず、「3歩進んで、2歩下がる」状態なのです。
現在実況中の吉房さん、松川さんのようにスムーズに進んだケースではなく、意見の合わない家族をまとめることに奔走する林さん。
そんな林家のリアルな人間関係をレポートしつつ、夢のマイホームが完成するまでを追っていきます!
実は家族の意見が合わないことが原因で、家づくりが難航するケースは珍しくありません。
長年住宅営業経験のあるクラッソーネの加納さんに、家族と家づくりのトラブルについて聞いてみました。
マイホーム購入時、両親が援助するケースが多く、『お金も出すけど口も出す状態』になりがち。
『お金を出してもらっている分強く言えない、でも我慢できない。どうしよう・・・』と悩まれるお客様は多かったですね。
たいていはご主人様のご両親と、奥さまの意見が割れるというケースでした。
うまく切り抜けるコツは、間に入る方が、双方を1つの方向に持っていくことですね。
とのこと。
今、林家には何が起きているのか、ご本人に語っていただきました。
現在実家の離れに新築を建てようと計画中です。
離れに家を建てる事になったのは、「今住んでいる町内から引っ越さない」いう条件を満たす土地はここしかなかったからです。
僕は一人っ子で将来を考えて両親の近くに住んでいたいのと、お祭り(*注1)の関係で地区外への引っ越しはしたくないんです。
不動産屋さんも行きましたが、条件が狭すぎてなかなかいい情報が出てきません。
「もうすぐあそこの家が空き家になる」とか、「建売ができる」など、ご近所スジの情報を活用して探していました。
祭りとは、「獅子舞」のこと。富山県では祭りのときには、獅子舞が行われるところが多いそうです。
その舞は、各地域で受け継がれてきた様々なスタイルがあるので、地域を変えると、活動してきたエリアの獅子舞に参加できなくなるという意味。
まずはじめは町内に「建売ができる」という噂を聞き、とあるハウスメーカーの分譲予定地を見に行きました。
実際に土地を見に行って広さや環境も申し分なく、気に入ったのですが、値段が土地代込みで3000万~4000万もすると聞いてすぐ諦めました・・・。
次は近所の方が売りに出そうと考えている、中古住宅を見に行いった林さんご夫婦。
こちらは立地的に線路が近く落ち着かない場所だったので、違うなと。
結局、予算的にも場所的にも一番しっくり来るのは実家の離れかなということになって。
もともと父の趣味である囲炉裏部屋しか使っていない状態で、他の部屋は空き家同然。
愛着のある家ですし、活用されないならなんとかしたいという思いもあったので、そこに新築を建てられたらいいなと思っていました。
今年に入り両親に相談したら、「離れの増築リフォームならOK」ということになったんです。
奥さんも実家の離れに家を建てるとなると、気遣いも増えてしまうけれど、土地代が大きく節約できるメリットを理解してくれました。
奥さんとの合意も取れて一体何が問題なのか?というところですが、まず「増築リフォーム」という言葉に注目してみましょう。
その言葉通り、「趣味の囲炉裏ルームはそのままにして、残りを好きにしなさい」という意味だったのです。
自分たちの新居+お父さんの囲炉裏ルームという、不思議な家づくりに挑むことになった林さん。
家づくりが進むに連れて、新築の間取りで、林家は奥さんとお父さんの意見が合わなくなっていくのです。
自分の実家の裏に住んでくれると決意した奥さんにはとても感謝しています。
そのため家はなるべく彼女の意見を優先したい思ったので、基本的には奥さん主導で決めることにしました。
とはいえ、両親の土地なので、彼らの意見も汲む必要がある。
なんとかなると思っていたんですけど、甘かったです。
その問題が間取り。
まずは住宅展示場が集まる「ジュートピア高岡」へ足を運んだ林さん。
そこで3社ほどハウスメーカーと相談し、間取りを書いてもらいました。
すると、日当たりのいい場所にある囲炉裏の位置を変更し、リビングをつくるというプランばかり出てきました。
父の囲炉裏が一番日当たりのいい場所にあって、間取りごとそのままにすると、リビングは暗い場所にしか作れなくなってしまいます。
住むのは僕たちなので、承諾してくれるかと思えば、父は断固拒否。
囲炉裏は日当たりのいい場所でないと困るから、それはできないと。
「たまにしか使わないのだし、譲ってあげてもいいのでは?」思ってしまいますが、その囲炉裏をご覧ください。
クオリティの高い部屋は、職人であるお父さんが趣味で作ったものなのです。
お父さんの楽しみはこの部屋で気の置けない友人を招いて、お酒を飲むこと。
この囲炉裏への愛着は相当なもので、少しの変化もお父さんには耐え難いことなのです。
離れはあまり採光が取れないので、日当たりの囲炉裏の部屋くらいしかリビングに適していないと、間取りを書いてもらって気づいたんです。
囲炉裏を優先すると、あまりの日の当たらないリビングになってしまう。
しかも母屋から遠い位置に囲炉裏を置くと、必然的に廊下か軒先を共有することになり、常に父親の友人と鉢合わせにならなればならない間取りになります。
妻には『お父さんの意図を汲みたいのはわかるけど、せめて最低限のプライバシーくらい確保して欲しい。』と切々と訴えられました・・・。
両親には土地を提供してもらうし、援助もいただけるので意見を尊重したいけど、それも限界があると。
妻は悩み、この件では半年くらい話し合いが持たれました。
お父様も頭ではわかっていても、踏ん切りがつかず、「リビングにしてもいいよ」「やっぱりだめだ」と二転三転。
林家は囲炉裏の場所をどうするかで、暗い気持ちになっていきました。
父も妻も本人に直接言えないので僕に意見を伝えるので、お互いのモヤモヤを受け止め続けるのが本当につらかったですね・・・。
でも焦ってると失敗するので、聞く時は10受け止めて、妻や父に意見を伝える時は2か3くらいしか言わないようにしています。
すべて要望を伝えれば「無理」と諦めてしまいますが、少しだけなら聞き入れる余裕があると思います。
こういうのは気長にやるのが、間にはいる者のコツです。
奥さまも険悪になっていくことに耐えられず、これ以上ご両親との溝が深まらないよう、定期的に実家に訪問。
良好な親子関係を保つように努力したそうです。
また、林さんのお母様も見かねて、コッソリ林さんに「お父さんも気にしていて、歩み寄ろうとしてくれるんだよ」と伝えてくれたりしたそうです。
日当たりのいい場所に囲炉裏を置くことのメリットは、気持よくその場所で過ごせることですが、普段住んでいる母屋からは遠い位置にあるので、行き来が面倒であるというデメリットがありました。
そのデメリットに注目した奥さまは、画用紙でお手製の模型を作って、そのメリットデメリットをわかりやすく説明したそうです。
この画用紙の模型を見て、日当たりより母屋からのアプローチのしやすさを取ったほうが良さそうだと思ったようです。
そもそも、母屋は築50年経過していて、柱もシロアリにやられていて老朽化も限界に来ている。
増改築ではなく、すべて壊して新しく作ったほうがよいということも理解してくれました。
こうして先の見えなかった、囲炉裏問題も解決しました。
でも今の囲炉裏を活かしたいという父の希望をどこまで反映できるかも課題。
そこは家を建てる工務店が決まったらまた相談したいと思います。
今回は両親と施主さんの意見があわない場合の旦那様の立場について語っていただきました。
うまく間に入るコツは以下のとおりです。
10聞いて、言うべきことを2~3選んで相手に伝える
つまり何でもかんでも伝書鳩状態になっていると、ただ関係が悪化するだけ。
話は受け止め、その中で言うべきポイントを絞込んで相手に伝えるようにしたそうです。
ポイントを絞りこんで、要求のサイズを小さくすることが効果的だったようです。
また説得や提案はなるべく論理的に行うことを心がけたそうです。
お父さんを動かした奥さんお手製の模型など、相手に伝わりやすい方法を考えて感情的に訴えないようにしたことも参考になります。
この件で父の囲炉裏へかける思いも、妻の気持よく新居に住みたいという気持ちも両方よく分かりました。
なんとかうまく譲歩しあってくれればきっといい家になると信じて、ネガティブにならないことがポイントです。
ようやく家族の問題が解決した林家。
次回は工務店選びと資金計画の問題に迫ります!