7月からスタートした「実況! 隣の家づくり」。
このコーナーは、今現在家を建てているご夫婦にご協力いただき、家づくりを密着取材するものです。
「家を建てる過程」は、知りたくてもなかなか知る機会がないもの。
家を建てる過程を紹介することで、これから家をつくる人の疑問や悩みが解決できればと思っています。
さて、今回は愛知県・日進市で新居を建築中の吉房さんご夫妻の第3回目です。
これまでは「家づくりのきっかけと資金計画」「土地探し」について伺ってきました。
2人目のお子様が生まれ、ゆっくりと子育てをしたいと「家づくり」を考えはじめ、資金計画を立てたり展示場を見学する中で「建築事務所で家を建てよう!」と決断されたお二人。
依頼先の建築事務所で土地を見つけてもらうという、羨ましい経験の持ち主でもあります。
第3回では、建築士に依頼した決め手や利点、こだわりの間取りについてご紹介します。
「建築事務所ってハードルも値段も高そう・・・」という、イメージが変わるかもしれません。
展示場を周る中で「どれも同じに見えてしまう」と感じ「建築士という手もある」と思われたそうですが、実際はどうやって探したのでしょうか?
身近に建築士さんがいなかったので、ネットで「愛知県 建築事務所」などと入れて検索しました。
「どこが私たちの希望に合うだろう?」と、地道にひとつひとつ見ていったんです。
ブログがあればそれも読んで、人となりもじっくり見ました。
あまりにもたくさん見たので、最終的にどうやってたどり着いたのか覚えていません(笑)。
最終的には自分の実家に近いということにもご縁を感じ『ICAアソシエイツ』さんに決めました。
HPを見ると、都会的でモダンな雰囲気の家を造っているようだったんですが、要所要所に木が使ってあって、懐かしい感じというか、温もりを感じましたね。
建築事務所はハードルが高い気がしたそうですが「まずは建築相談にどうぞ」という建築士の言葉に、お二人は足を運んでみました。
建築士さんが、だいたいの広さとか予算とか、限られた条件の中でいろいろな提案をしてくださって。
まだ土地も具体的な希望も固まっていなかったのですが、話す中で何となく僕たちの思いを汲み取ってくれました。
イメージを膨らませるのがすごくうまい建築士さんで、家づくりに対する愛情というか、真摯な姿勢を感じました。
建築士さんに頼む人ってこだわりが強いイメージで、うちはそこまで決めて行かなかったのに「こうしたいな」というふわっとしたイメージから、絵を作ってくれたんです。
それでだんだん固まっていったという感じですね。
実は他の事務所でも相談したのですが、ここが一番僕たちがやりたいことに応えてくれるような、一緒につくってくれるような思いを感じたのが決め手になりました。
では、実際の間取りでのこだわりや、苦労した点はどんなところだったのでしょう。
私がこだわったのは「家事動線」で、中でも洗濯する場所ですね。
うちは子どもが二人とも男の子。
大きくなって部活を始めたら洗濯物が増えそうなので、なるべく負担を減らしておきたくて(笑)。
干す時には室内の作業スペースで作業して、それをすぐ外に干せて、乾いたら取り込んですぐ畳めて、雨なら作業スペースでそのまま室内干しができるような場所になりました。
キッチンとも連続した空間にして、最小限の移動で料理と洗濯と掃除をスムーズにこなしたかったんです。
僕はそこまで強い希望はなかったんですけど、ウッドデッキに憧れがありました。
その後決まった土地が緑いっぱいのロケーションだったので、この環境を活かしたい! と、さらに憧れが増しましたね。
それに趣味のドラムの練習スペースも作ってもらえたのは本当に嬉しい。
ここでドラムを叩けると思うと完成が待ち遠しいです。
早く引っ越したくてスケジュールもタイトだったんですが、スピーディに進めてもらって助かりました。
皆さんそうだと思うんですけれど、家づくりってどうしても予算の兼ね合いがついてきますよね。
建てている間に予算がオーバーしがちですが、無限には出せませんが、かと言って建物を小さくことはしたくない。
予算内でやりたいことを実現させるために、徹底的に無駄を省いてシンプルにしながら、必要なものは残すという絶妙なバランスでプランニングしてもらいました。
『コストコントロール』とおっしゃって、建築士さんはよく「無駄なものを落とすボクサーの気分です!」と笑って話されていましたね。
一般的に「建築事務所にオーダーすると高いのでは?」というイメージを抱く方も多いと思うのですが、実際のところはいかがだったのでしょうか?
私たちも「建築事務所=高い」というイメージがありました。
専門性が高くてマニアックというか、深いところまで考えているような印象で。
でも蓋を開けてみると、そ希望と予算をきちんと伝えたことで、その範囲でできるよう親身になって考えてくれて頼りになる存在。
家も標準仕様がない分、イメージや予算に応じたものを提案してくれますし、ハウスメーカーだとCMなどでブランディングの必要がある分、価格も高いのかもしれませんが、建築事務所だとその必要がないからかもしれません。
建築士さんってブランドイメージよりも「住む人一人ひとりに合う家そのもの」にプライドを持っていると思うんです。
依頼者に寄り添って、依頼者の提示する条件の中で、規格品ではないものを創ることに重きを置いているというか。
こまごまと決めることが多いのかなと思いましたが、イメージが決まれば選択肢の幅も決まるのか、そこまで大変には感じませんでしたね。
工期もあり、はじめのうちは打ち合わせは毎週でした。
でも最初に全部きっちり決めず、進捗状況を見ながら「お風呂のタイルはどうしますか」とか「棚の位置どうしますか」とか少しずつ聞いてくださるので、気楽に進められましたね。
こうして現在、建築が着々と進んでいる吉房家。
家づくりというのは、大半の人が一生に一回経験するかしないかの一大イベントです。
予算や選択の幅もあるので「この中から選ぶ」というシステムを持つハウスメーカーを選ぶ人も多いかもしれません。
ところがお二人は「相談だけでも」と建築事務所の門を叩いたことで自分たちの家づくりと向き合い、土地まで見つかりました。
机の上で考えるだけでなく、思い切って動いてみる勇気も、家づくりには必要なのかもしれませんね。
さて、次回は地鎮祭と棟上げの様子とともに、家具を含めたインテリアも拝見してレポートいたします。
緑豊かなロケーションに立つ、子どもと過ごす時間が大切になる家。
建築士さんと二人三脚で徹底して無駄を省いた、シンプルな家がどう造られていくのか、興味深々です。