こだわりを持ったお宅を拝見する企画「おうちみせて」。
今回は、名古屋市守山区に、こだわり満載のおうちがあると聞いて行ってきました。
木の風合いを生かしつつ、堅牢な造りで、薪ストーブがあり・・・と前情報だけでも期待がふくらみます。
訪問先のMさんご夫婦のお宅は、新しく開発がすすむ地域にあります。
緑に囲まれた、のどかな住宅地のなかに、煙突のあるおうちを発見!
青々とした芝生、枕木の花壇、周囲に広がる緑…と、ドラマに出てくるような幸せオーラを放っています。
ちいさなお子さんがいらっしゃるのかな。
薪ストーブと大きなテーブルを中心とした温かいリビング
ようこそ! どうぞお上がりください。
さっそくおじゃますると、開放的な空間が出迎えてくれました。
柱や壁がなく、キッチン、ダイニング、リビング、和室までが見渡せる気持ちのいい空間です。
広々とした中にトランポリンやハンモックが置かれ、4歳になる長女のNちゃんが生き生きとした表情で遊んでいました。
キッチンで食事の用意をしながら、家族と話したり、子供が遊ぶ様子を見守ったりすることができて安心です。
トランポリンスペースの奥で、薪ストーブが落ち着いた存在感を放ちます。
ダイニング横にあるキッチンカウンターの下は収納棚になっており、Nちゃんの遊び道具で溢れています。
ポップな色のケースを利用しているので、散らかった印象はありません。
子供が自分で片付けるんですよ。
見せる収納でありながら、子供のためにもなり、お母さんの手もわずらわせないという賢い方法です。
実は、最初はお酒を並べる予定だったんです(笑)
と、ご主人は教えてくれましたが、状況にあわせて、使い方を切り替える気持ちも大切ですね。
カウンターには自家製の果実酒がありました。
生活を楽しんでいる様子が伝わってきます。
換気にこだわり、風が通る設計
訪れた日は残暑厳しい日でしたが、風通しがよく、エアコンなしでも快適です。
東西と南北、必ず相対するところに窓を作りました。
和室には押入れでなく収納棚を付け、下に空間を作って、ここにも小窓を設けました。
もはや禅問答?堅牢だけど木の風合いを活かす家にしたい
ご自宅は2階建てですが、1階を拝見しただけでも、家づくりへの情熱が伝わってきます。
こだわりの点も含め、家づくりって実際どうなのか、何が大変で、どこに気を付けたらいいのかを聞いてみたところ、相当大変な道のりだったようです。
多趣味でこだわりが多いご主人と、合理性を追求する奥様との家づくりエピソードをお伺いしました。
以前は2LDKの古いアパートに住んでいたのですが、建て直しすることになったんです。
それで、私の両親の土地に家を建てさせてもらうこととなりました。
私は関東出身なので狭い家には抵抗がないのですが、主人は広い家で育ったので広い家じゃなきゃ嫌だと。
私は逆に贅沢だと思ってしまって。
最初の時点から意見に食い違いがありました。
ご主人と奥様にそれぞれのこだわりがあり、なかなかスムーズには進まなかったようです。
車関係の仕事をされているご主人は、堅牢性を求めて鉄筋の家を希望していました。
くわえて、キャンプをはじめとするアウトドアが趣味でもあり、木のぬくもりも捨てがたい。
しかしながら、木の伸縮性と鉄のかたさとを同居させるとなると、費用がかさんでしまいます。
各ハウスメーカーに聞き込み、間取りを作成してもらうなど、リサーチに何年も費やしましたが、疲れて中断してしまいました(笑)。
二人の意見は「工務店の人柄の良さ」という点で一致した
奥様のご懐妊もあり、家づくり活動はいったんストップ。
その後、鉄筋ではなく「耐震性をそなえた木造の家」に的を絞ってリサーチを再開したものの、意見はなかなかまとまりません。
木造ならばログハウスがいいと思いました。
ログハウスは収納に不安が・・・。
それに、家全体のデザインは統一したい。
夫はデザイン的にガチャガチャでも気にしないから。
過去にデザインの仕事をしていた奥様は、統一感を重視したいという考えもあり、ログハウスにするとインテリア費用がかさむのではと思われたようです。
夫婦間で工務店の好みも違いましたね。
そんなご夫婦にとって、業者選びの決め手となったのは「人」でした。
ポスティングされていたチラシをきっかけに、完成見学会へ行きました。
熱意を持って対応してくれる工務店さんと出会い、「この人たちならお任せできる」とふたりの意見が一致したのです。
Mさん一家が選んだ工務店のニケンハウジングさんでは、まずどんな家に住みたいかという質問からはじまりました。
間取りを考える前に、生活や趣味を聞いてくれたんです。
工務店さんが話を引き出してくれるのですが、ふたりの意見をすりあわせるのが大変。
夫のこだわりがありすぎるので、私はそれをセーブするという役割でした。
そこでまとまった希望が以下の通りです。
- 薪ストーブを設置する
- オープンな空間
- 大きなテーブルを置く=ゲストをもてなしたいというご主人の気持ち
- 風通し
- 収納
家中がポカポカになる薪ストーブと空気の流れ
このひとつひとつにこだわりのエピソードがあります。
まず、家の方向性を決めたともいえるのが薪ストーブ。
キャンプで焚き火をするのが好きなご主人が、家の中でも炎が見られたらという想いで導入しました。
愛知県だけでなく三重県にも足をのばし、何軒もの薪ストーブ店をまわった結果、お気に入りのストーブが見つかりました。
この製品は炎がきれいに見えるんです。
窓ガラスが大きいし、格子が入っていないので、炎を観賞するのに向いています。
ほか、入手しやすい針葉樹も燃やせるなどのメリットも挙がりました。
薪ストーブがあるだけで部屋のムードがぐっと変わりますが、それを囲む飴色のレンガも雰囲気があります。
理想のレンガを求めてリサーチした結果、安城市のレンガ専門店で購入しました。
その時見積もりを取っていた、エクステリア業者さんに教えていただいた店です。
なんと、レンガまでご自身で選ばれていたとは・・・!
開催年のオリンピックのマークが付いたアンティークものから安価なものまで、種類豊富に置かれたレンガのなかから、好みの色やサイズを探したそうです。
ただ業者に発注するだけでなく、作り手として家づくりに参加したいという気持ちが伝わってきますね。
マテリアルまで究めたい人は、こうした業務向けショップをまわってみることもオススメします。
薪ストーブに関するこだわりは、これだけではありません。
家全体が効率よく暖まるよう、ご主人自ら換気の設計もされています。
2階に小窓を作り、暖かい空気が循環するようにしました。
1階にある薪ストーブで暖められた空気は上昇し、吹き抜けを通って2階を暖めます。
その空気を循環させるために、吹き抜けの先に小窓を設置し、空気の流れをよくしました。
暖められた空気は2階の各部屋に行き渡り、廊下を通って階段から1階へと流れ、家全体を暖めるというわけです。
吹き抜けと2階小窓の間には、スクリーンが設置されています。
1階だけを効率よく暖めたい時はスクリーンを閉めます。
なるほど、そうすれば暖かい空気は2階に流れません。
長年つきあっていく家ですから、見た目だけでなく、効率性を考えることも重要ですね。
楽しさが伝わるお父さん憧れの趣味部屋とハンモックがある2階
さぁ、では2階のお部屋も拝見いたしましょう。
通常イメージするおうちと異なり、2階に浴室・洗面スペースを配置しています。
水回りを2階に置くことで、1階を広くして風通しをよくしました。
廊下から扉を開けて手洗いスペースに入ると、さらに引き戸があり、その奥には広々とした洗濯スペースと浴室&脱衣所があります。
本来なら仕切らずに繋がっていることが多いスペースですが、一体なぜ?
手洗い場から脱衣所が見えないための工夫です。将来、娘が嫌がるでしょうから。
10年先のことを考えて、お父さんから娘さんへ向けた愛情でした。
そして、廊下を挟んだ反対側には、とっても楽しそうな部屋がありました。
世のお父様方の憧れ、ご主人の趣味の部屋です。
L字型の作業台は、DIYを得意とするご主人が制作したもので、スキー板をチューンナップするための道具を収納したり、PC作業をしたりと大活躍。
部屋にはギターやウクレレも並んでいて、Nちゃんと一緒に演奏することも。
ほかにも子供部屋やバルコニーにはハンモックを設置できるよう天井に金具を取り付けたり、トイレの手洗い鉢を探すために毎晩ネットリサーチをしたりと、こだわりエピソードが次から次へと出てきます。
奥様のこだわりは雰囲気のあるお庭
ところで、ご主人の趣味部屋はありましたが、奥様の趣味はどこかに反映できたのかも気になるところです。
私はあまり趣味がないのですが、しいていえばガーデニング。
庭については、唯一、私が強引にすすめました!
希望のエクステリアと庭を作ろうと思うと、予算をオーバーしてしまったとのこと。
ここでもまた、自ら情報を集め、夢を実現させます。
インターネットで検索をして、業者を探していた奥様。
床材のサンプルを実際に体験できるグリーンウッドという無垢フローリングの製造直販会社を見つけ、いろいろと相談しました。
親身になって一緒に考えてくれる姿勢が気に入り、関連会社のグリーン工房さんに施工を依頼。
門扉からアプローチ、ウッドデッキ、芝生、枕木花壇までと、お庭全体を予算内で奥様の思い描いた通りに仕上げてくれました。
打ち合わせ50回以上、工務店と一緒に作った渾身の家
さて、これだけのこだわりを盛り込んだおうちとなると、工期も費用もかなりかかるのではと気になります。
実際、本腰を入れて打合せをしてから完成までの期間は1年半。
最初のリサーチ期間も入れると、8年もの道程になりました!
工務店さんとの打ち合わせは50~60回やりました。
ハウスメーカーなら、打ち合わせの回数も決まっていて合理的に進めるのでしょうが、こちらの工務店さんの場合は、納得いくまで付き合ってくれました。熱意を持った工務店さんでないと、私たちには無理だったでしょう。
申し訳ないくらいあれこれ要望を言いましたが、「できません」とはほとんど言われませんでしたね。
なんとか叶えてくれようとする姿勢の工務店さんのおかげで、理想の家が作れました。
また、M邸の場合、外部商品の持ち込みに寛容だったことも、珍しいケースです。
薪ストーブもレンガも、持ち込みすべてOKだったのはとてもありがたかったです。
メーカー指定のものを使うことが主流なので、持ち込みは追加料金が発生する場合が多いようです。
家づくりは結婚式に似ていますね。
一般的に、ハウスメーカーに比べて工務店は自由度が高いとされていますが、その分、施工主に決定力が求められます。
工務店さんに依頼する場合は、施工主さん自らが労力をいとわないタイプの人が向いているようです。
ちなみに費用はストーブ、外構除き3000万円ちょっと。
大手ハウスメーカーに注文していたら、この額では収まらなかったのではないでしょうか。
工務店さんの努力、そしてMさんご夫婦の熱意の賜物ともいえます。
夫婦のぶつかりあいがあるから、納得の家が生まれる
さて、いかがでしたか?
こだわり派のご主人と、全体のバランスを重視する奥様との家づくり。
紆余曲折を経て、結果、どこを切り取ってもエピソードがある、すてきなおうちが完成しました。
異なる価値観を持つ人同士が家族になり、一軒の家を建てるまでにどれだけの意見がぶつかりあったかは想像を超えるものかもしれません。
ですが、ぶつかりあいは「ものづくり」の基本です。
Mさんご夫婦のエピソードを聞いていると、家を「購入」したのではなく、一緒に「作り上げた」という印象が強く残りました。
きっと、この先も手をかけながら、家を育てていくのだろうなと思うと、何年後かにまたおじゃましたくなりました。