このコラムは現役建築士寺川が担当しています。

今回は、初回のコラムで紹介しました「幸せな家づくりのためのポイント4つ」の3つ目「お金、家族、社会に対する考え方」で、「なぜ家を建てるのか」、家を建てる動機の持ち方についてお話します。

あなたは何のために家を建てますか?

住宅不足が深刻だった戦後を経て、1973年に住宅戸数は世帯数を上回りました。
それからも毎年どんどん新しい家が建ち、今では空き家が800万戸(全体の13.5%)を数えると言います。
そんな中、私たちは今日も新しく家を建てます。

私はお客さんに必ず「なぜ家を建てるのですか?」と聞きます。
その問いから家づくりは始まると思うからです。

みなさんは、ドラマなどこんなシーンを見たことはありませんか?
「ねぇあなた、○○さんも家を建てたのよ。うちもそろそろ・・・」ネクタイを締めながら上目遣いの奥様。
そんな光景が今時のご家庭にあるのかわかりませんが、「人が家を建てたから自分も建てる」という動機では、本当に満足する家になるのかは疑問です。

娘と一緒に暮らすための家を自分主導で考えた父

ある日のお客さんA氏の話です。
50代くらいの落ち着いたご夫婦で、奥様と一緒に相談に来られました。
どんな家を希望しているかを聞いてみると、お二人で住むには大きすぎる間取りを希望されていました。

A「1階はLDKと水回りと和室4部屋あればええ。2階は洋室6部屋とウォークインクローゼットが2つ。
あと出来れば洗面と風呂もつけたいな」

寺川「待って下さい!?いったいどんな大家族で住むというのですか?」

A「わしと・・・妻の2人や。せやけど違うで寺川君。
将来的にはここに娘2人の家族がそれぞれ住むことになるから、広くしとかなあかんのや。」

寺川「なるほど。で、娘さんもそれを望んでおられるのですね?」

A「(娘には)言ってはないけどな

話を聞いていると、娘が皆出ていったことを寂しく思っておられることがわかりました。
大きな家を建てて皆で住むことが、Aさんの夢なのでした。

大きな家を建てたら、もしかしたら娘たちが帰ってきてくれるのではないか。
そんな切ない願いがそこにあったのです。

損得ではなく、家づくりには住む人の動機が重要

「家賃を払い続けるのはお金を捨てるようなもの。いつか(家を)建てるなら今建てないと損ですよ」
私も住宅の営業マンをやっていましたのでよく言いました。
それは間違ってはいないと思います。

しかし「損得」を動機に家づくりを進めることは、「安物買いの銭失いになる」という落とし穴もあります。
また、心がお金に縛られ自由な精神を失うと幸せを感じにくくなるように思います。

しかし、「家族の夢」を共有する家づくりは楽しくなります。
例えば「将来夫婦でカフェを営む」という夢を共有したとします。

カフェを営むにはどんな家にすればよいか意見を出し合って考えるのは楽しいですし、ローンを払っていくことさえ自分達の夢のカフェをオープンさせるための準備のようなものです。
そう思うとワクワクしてきませんか?

「家族の夢」に動機づけられた家づくりの極意のようなものがあります。
そのあたりは私の師匠の著書「住む人が幸せになる家のつくり方」(八納啓造著)に詳しいです。是非ご一読下さい。

まとめ

今回は「お金、家族、社会に対する考え方」から、「家づくりの動機の持ち方」についてお伝えさせていただきました。

「何のために家を建てるのか」という問への考えに広がりがあればあるほど、家づくりを通じてより多くのものとつながるようになります。
つながった分だけ大きく幸せを感じられるのだと思っています。

家づくりを進める全ての人が、不安と悩みを癒され、ワクワクし、願いを叶えて、愛情豊かな暮らしを手に入れて欲しいと思います。