こんにちは。
クラッソーネライターの豊田有希です。
富士山と生きるおばあちゃんの知恵では、山梨県巨摩郡身延町に住むおじいちゃん、おばあちゃんの暮らしの知恵を毎月紹介しています。
第21回の5月(皐月)。
取材に行く途中、身延町の本栖湖から見える富士山。
千円札の裏側に描かれている逆さ富士のモデルです。
雪が少なくなりだんだんと夏富士へと変わっていきます。
5月といえばお田植えの季節。
毎年身延町の「田んぼできずなづくり」の田んぼには、都会から沢山の人がやってきます。
今年は2歳から70代まで合計52人。
おじいちゃん、おばあちゃんには、先生としてお田植えのやり方を教えてもらいました。
おばあちゃんのお田植えファッションはこちら。
完全日焼け防備をしながら、白いフリルつきの帽子が清楚なスタイルです。
笑顔がとっても素敵です!
おばあちゃんはとっても手馴れていて、誰よりも早く、かつ丁寧に、正確に苗を植えていってくれます。
私たちの約2倍のスピードといえばわかりやすいでしょうか。
この苗を植えていきます。
手にもった苗の束から5本の苗をとるのがなかなか大変な作業なんです。
一列に並んだ昔ながらのお田植えスタイル。
子供も慣れない手つきで頑張ってくれています。
この日は、曇り空で気温が25度と最適なお田植え日和。
日差しに体力を奪われることなく、時より肌をなでる心地よい風を感じたり、鳥の鳴き声を聴いたり。
お田植えをしながら、隣の人とたわいもない会話をする、そんなゆるやかな時間が過ぎていきます。
おじいちゃんは、みんなが田植えをしやすいようにと地面をならしてくれています。
お田植えには、沢山の子供たちがやってきました。
子供たちのお目当てはヤモリやおたまじゃくし。
おじいちゃんは、そんな子供たちが見つけやすいようにと「ヤモリの家」を即席で作っていました。
もちろん子供たちは大喜び。
自分たちも、ヤモリの保護施設という名のヤモリ基地を作っていましたよ。
畑に行くと、「また猿に食べられたよ。網の外から手を伸ばして上手に取るんだよねぇ~」と感心しながら話してくれました。
「玉ねぎがよくできたなぁ。そろそろ食べごろかなぁと食べようとすると、人間より一足先に猿に食べられてしまう」そうで、「初物は動物が食べてしまうさ~(笑)」とおじいちゃんは笑っています。
おじいちゃんが作ったお手製の網で囲まれているおばあちゃんの畑なのですが、約10センチ幅の網の間に手を入れ、そこから手を伸ばして”たまねぎ”を取っていき、網の上に登って手を伸ばし、上から”えんどうまめ”をつるごと引っ張って取っていったそうです。
玉ねぎを取られてしまった後の写真がこちら。
わかりやすく黄色く丸をしたところにも、玉ねぎがありました。
網の近くの一番手前の列を上手に抜いていってしまった跡。
対策として網目の小さなネットを二重に重ねることで手が入らないようにしたそうです。
こちらはえんどう豆。
赤く丸をつけたところをよく見て頂くと、緑のツタが切れています。
上から猿が手を伸ばしてツタをひきちぎったところだそうです。
猿、なかなかやりますね。
上の網にポールを入れていたらそこがまんまと猿の”足場”となっていたようなので、ポールを抜き、不安定な網だけにして上に乗りにくいように工夫したとのこと。
こんな風に、「知恵くらべ」な毎日です。
猿は、お二人がちょっと留守をした際に、こっそりと畑にやってくるそうで、侮れません。
そして畑に近づくときも、家とは反対側の場所から近づいてくるそうで、”見つかっても逃げやすい”ところしか狙わないという頭の良さ。知恵比べはまだまだ続きそうです。
<畑の中で草刈をするおじいちゃん。ロックな感じがするのは私だけでしょうか?>
おばあちゃんの畑には夏野菜の実がつき始めていました。
もうすぐ収穫ができそうです。
きゃべつ、なす
じゃがいも、とまと。
畑でおばあちゃんと話していたら、「昔は『梨の花が咲いたらしょうがを植える』って言ったりしたのよ」と教えてくれました。
そして植えたしょうがは「田植えの声をきかないと(芽が)出てこない」んだそうです。
他にも「いもつつじ」という言葉があって、「紫のつつじが咲いたらさつまいもを植える」というように、季節の移り変わりを地域に咲く”花”などで感じ、作物を植えるなどの農作業の営みの参考にしていたのだということがこの言葉から伝わってきます。
自然の移り変わりに敏感でないとこういったことは難しいと思うのですが、今のような情報社会ではなかったからこそ、自然の移り変わりをより五感で感じていたのではないかと思います。
毎月おばあちゃんの家に行くと、季節のお花が歓迎してくれます。
お庭で迎えられ、玄関で迎えられ、家の中でもお出迎えです。
季節の花を愛でる喜びを教えてくれます。
旬の食材で季節を楽しむ、感じる暮らし
「今年最後の竹の子よ」、と竹の子の煮物、わらび、お手製のカスピ海ヨーグルトをおやつにご馳走になりました。
3月から約2ヶ月、毎日食卓に竹の子がない日はなかった、というおばあちゃんの食卓。
お正月用にに保存したものの、採りたての竹の子が食卓に上がるのはもう最後。
自然の恵みに感謝をして頂いているというお気持ちが伝わってきます。
わらびがまだ取れるそうで、2日~1週間に一度、ちょっとそこまで蕨を取りに行って、あく抜きをして、いろんなお料理にするそうです。
今日のわらびはオリーブオイル・醤油、味醂で味付けされたものでした。
季節のものを食べる、という習慣は田舎では当たり前なのですが、都会に住んでいるとなかなか”旬”を味わうことは貴重になっていますよね。
その時にしか味わえないものをありがたく味わいつくす、そんな食で季節を楽しむ暮らしがここには残っています。
こちらはきゃらぶき。
ご飯のお供に煮たものです。
ほのかな苦味がお酒に合いそうです!
ふきは、出始めはやわらかく、だんだんと時期が遅くなっていくと硬くなっていくそうで、きゃらぶきにはやわらかいものを使うそうです。
調味料はお好みの味に調節をしてみてください。たかの爪などを入れてもOK
ご飯のお供、お酒のつまみにちょこっとあると嬉しいきゃらぶき。
なかなか手作りはハードルが高いかもしれませんが、やわらかいふきが手に入ったらチャレンジしてみてくださいね!
おばあちゃんが「これはめおと梅って言うらしい」と教えてくれました。二粒の梅がくっついているから”めおと”なんですね。
この木の実はすべて二粒がくっついていました。
苦味があっておばあちゃんは食べないそうです。
そういえば、6月は”梅仕事”の季節。
もうそろそろ梅の季節が始まりますね。