8月からスタートした新コーナー「おうちみせて」です。
こちらは、家を楽しんでいる方々のお家を見せていただき、インテリアやこだわり、楽しみ方などを伺うコーナー。
1回目は名古屋市中村区のIさんご夫婦のお宅にお邪魔しました。
Iさんはご夫婦ともにご自宅で旦那様はデザイン、奥様はアパレルのお仕事を行っていて、5歳になるお嬢さんと3人で暮らしていらっしゃいます。
お住まいはいわゆる古民家で、広さは5LDK。
昭和27年に完成した、築60年以上の緑豊かな庭付き一戸建て。
「賃貸」「一軒家」「庭付き」にこだわって探し、心地よい住まいを実現しています。
目の前に広がるのは、懐かしい昭和の雰囲気。
さまざまな野菜が実る家庭菜園と、蚊取り線香の香りが迎えてくれました。
気候がいい時は七輪でバーベキューをしたり、花火をしたりと、庭付きの一軒家だからこその楽しみがあります。
庭は夏場は草と蚊との戦いですが、家庭菜園ができるので嬉しいですね。
訪れたのは暑い日でしたが、一歩中に入ると冷んやりとした空気に包まれます。
築60年ながら借りる時には床も天井も壁も直す必要がなく、変えたのは照明の一部だけだそう。
入る前に、きちんと大家さんが修繕してくれていました。
玄関の向かって右手に水回りがあり、左側には旦那様がDIYで作った棚があります。
旦那様はDIYが大好きで、家や生活に合わせて家具を作ったり、調整したりしているのです。
靴を脱いで上がると、正面がダイニング、カウンターを挟んでキッチンがあります。
テーブルはIKEA、椅子はイームズとロビン・ディ。
小物はリサイクルショップや、奥様のお友だちが営む古道具屋で探してきました。
先ほどの棚同様、マガジンラックや戸棚、キッチンとの間仕切りであるカウンターも、旦那様によるDIY!
家族が集う気持ちの良いリビング・ダイニングで、この家に住むことになったきっかけを尋ねました。
以前は2DKのアパートに住んでいたのですが、仕事の道具が増えて手狭になって。
夜型だったり音楽が好きなので、音を気にせず楽しむのであれば、一軒家がいいのかなと。
祖母の家が山に囲まれた田舎だったこともあり、古い家が好きでずっと住みたいなと思っていました。
私が生まれ育った場所はビル街だったので、ずっと星の見える生活に憧れて、夫の影響でさらに、古い家でのんびり暮らしたいなという思いが強くなったんです。
家は私が代表して探して、半年くらいでこの家を見つけました。
古民家探しには口コミが有力とよく聞きますが、お二人はどうやって探したのでしょう。
私たちはミニミニやSUUMOなどネットで検索しましたね。
実際に見たのは5軒くらいで、中には大きく修理しないと住めないようなところもありました。
条件は仕事場も兼ねているので部屋数が多いことと、名古屋市内であることで、築年数には全くこだわりませんでした。
私たちは賃貸で考えていたのですが、実際行ってみると大家さんと玄関が一緒だったり、敷地内同居だったり、長屋のような造りだったり。
「賃貸の一軒家」自体が少ないので難航しました。
あとは、賃貸の一軒家だと大家さんとの相性も大切だと思います。
今の大家さんは本当にいい方で、少し離れたところに住んでいらっしゃるのですが、定期的に草むしりに来てくださるだけでなく、ご自宅に招待してくださったりと仲良くさせていただいています。
たまに玄関におすそ分けの野菜が置いてあることもありますし、出産の時も「大変だから」と、ご飯を作って持ってきてくださって、本当にお世話になりました。
私は「名古屋のお母さん」と勝手に呼んでいます(笑)
この辺りは古くから住んでいる方が多く、建物の昭和感だけでなく、古き良き「ご近所づきあい」ができるそう。
知らない人がいるとすぐわかるので、安全さもいい。
すれ違う時に『買い物にいくの~? 私の分も買ってきてね~』なんて冗談も言ってくれる、チャーミングなおばあちゃんが多いんです。
目の前の道はこの家にだけ通じているので、子どもを遊ばせていても車の心配がないのがいいですね。
半年かけて探し、条件をクリアしているかなどトータルに判断、最終的には「フィーリング」でこの家に決め、5年が過ぎたそうです。
さて、Iさん宅で大きな力を発揮しているのが、先ほどふれた旦那様によるDIYアイテムです。
キッチンとダイニングを仕切るカウンターも、もちろん旦那様によるもの。
以前使っていたものを、キッチンのスペースに合わせてカットしたそうです。
大学が造形大学だったので、授業で木工もやっていたんです。
祖父が大工職人、父が電気工事を営んでいたので、いつでも木とか釘がある環境で、小さい頃は作業中の家にもよく行きましたね。
「自由に作ったんで雑ですよ」と笑う旦那様でしたが、環境といい経験といい、これはもうプロの域です!!
窓側の棚も、レンジ台も旦那様の作品です。
奥様の趣味は料理なので、キッチンは一番好きな場所だそう。
L字のカウンターは作業スペースも広く、料理がしやすいです。
私が一番気に入っているのがこのフライパン置き。海外のインテリア雑誌を見て、夫が作ってくれました。
雑誌を見て製作したとは本当にすごいです。
スペースや持ち物に合わせて、カスタマイズできるのがDIYの魅力。
どんな間取り、どんなすき間にもピッタリはまり、思い通りに使いこなせ、古民家暮らしをますます快適にする、最高のツールだと思いました。
1階の仕事部屋は、旦那様が一番長く過ごす場所でもあり、こだわりが詰まった場所でもあります。
広さは9畳ですが、京間か中京間なのか一畳が大きく、押入れをオープンに使っているのでとても広く感じます。
お二人で作業することも多く、それなりの広さが必要だったそう。
机やさまざまな棚にも、旦那様のDIY技術が光っています。
経年でしか出せない味がありますよね・・・。
この家の好きなところのひとつです。
大家さんによると、もともと最初は宮大工さんが建てたので、釘を一本も使ってなかったそうです。
さすがに60年も経っているので、あちこちに釘の跡はありますが、基礎がしっかりしているように感じます。
昔ながらの和室には、縁側がついているのも嬉しいです。
たった半間の「ゆとり」が、日常にもゆとりを感じさせてくれるのかもしれません。
仕事部屋の隣は子ども部屋で、こちらの机や本棚、鏡台なども旦那様によるDIY。
お嬢さんが日々楽しく遊んでいるそうで、最近はお父さんの真似をして、創作活動を始めているとか!
このお部屋で、注目すべきは子ども部屋の片隅にある棚。
こちらはゲームコーナー。
意外にもこちらが旦那様の一番お気に入りのDIYだそう。
ゲームが大好きで、プレステ、ファミコン、スーパーファミコンなど、それぞれの幅をきちんと計算して、ひとつの棚に収めました。
どのゲーム機も現役で活躍中ですよ!
家そのものも、ゲームも、これまで拝見したDIY家具も、すべてを大切にしながらいつまでも使い続けているIさん。
「もの」を大切にし、暮らしにあわせて家具を作り出している感じがします。
玄関の脇には水周りがまとまっています。
お風呂のタイルは今は売ってないので、女性でも簡単にできる修理技術を、今後勉強していきたいなと思っています。
古民家に住むと修理能力は付いてきますね。
例えば水道のパッキンとかも業者にも頼めますが、自分でやったほうが早いし安い。
自分で直すことで、家への愛着も湧いてきます。
次は2階を拝見します。
昔の家にはこういうスペースが必ずありましたね。
Iさんのお家は、仕事の資料や本、DVDなどを収納するスペースで、この扉は1階にあった余分なふすまを2階の扉として活用しています。
こちらは奥様の仕事場。
大きな型紙を広げたり、布を裁断する作業は真ん中で、ミシンスペースは奥にありますね。
作業台も、夫が作ってくれました。
身長や作業の仕方に合わせたオーダーメイドなのでとても使いやすいです。
こちらは寝室で、真っ白な蚊帳が目を引きます。
インテリアとして使っているのかと思えば、蚊が多いので機能を求めて蚊帳を使用しているそう。
風通しはいいのですが、昔の一軒家は2階が暑くて、ここと仕事部屋だけクーラーを付けました。
布団は直敷きも考えましたが、暑さと虫対策でベッドにしています。蚊帳は出入りする時に気をつけないと、蚊が入り込んで意味がなくなるので要注意ですよ。
都会の中で経験できる田舎暮らし。
周りと馴染みながら、自分らしく住まう。
最後に、お二人にこの暮らしの素晴らしさと今後の夢、古民家で住む時の心積もりなどを尋ねました。
トータルで満足していますね。
人によると思いますが、古い家にはすき間があって、でもそのすき間が心地よいというか、密閉されていない抜け感が心地いいと感じています。
あとは、古民家でしか出せない経年変化も好きなところです。
短所を挙げるとすれば冬の寒さと虫が多いこと、夏は草むしりが日課になること。
この3つがどうしても苦手な人は、覚悟して引っ越した方がいいですよ(笑)。
その証拠にこの作業用の麦わら帽子に、ほっかむり(女性用の首まで覆える農作業帽子の愛称)が!
朝6時におきてせっせと草をむしっているそうです。
私も満足しています。
田舎に暮らしている感覚なんですが、場所は名駅とか栄に近く、都会と田舎のいいとこどりしてるなと思っています。
周りの人もすごく温かいし、高齢の方が多いせいか大切にして頂いて、毎日有り難いなーと思って生活しています。
田舎のような都会のような暮らしを望む人には、新興住宅地ではなくこういう環境を探すのもいいかもしれませんね。
今後は音楽が好きなので、オーディオに凝っていきたいですね。
「おしゃれさ」を追求するよりも、家族が住みよい家というのをテーマにしていけばいいのかなって思っています。
築60年の古民家での暮らし、いかがでしたか?
Iさん宅にとって当たり前のDIY、部屋の至るところにお手製の家具があり、どれも家族にぴったり合っていて使いやすそうでした。
古民家暮らしは建物が古い分、設備が整っていなかったり、修理の必要があったりで、最新のマンションに比べると生活しにくいと思う人も多いでしょう。
でも、悪くなったところを直し、自分たちで使いやすいようにしていくことは「家族と家が一緒に成長していく」という喜びになるのかもしれません。
Iさん宅の場合は、昭和の古き良きご近所づきあいが、平成のこの時代に体験できるのも魅力だと思います。
とても静かなロケーションで、お話の合間に聞こえる振り子時計の「カチカチ」という音が印象的でした。
ひとつひとつの家に息づく、一人ひとりの暮らし。
これからも新旧問わず、こだわりの毎日を過ごす人たちをピックアップしていきたいと思います。