Categories: 富士山と生きる おばあちゃんの知恵

田んぼの藁を使った自家製しめ縄作り

こんにちは、クラッソーネライターの豊田有希です。
富士山と生きるおばあちゃんの知恵では、山梨県巨摩郡身延町に住むおじいちゃん、おばあちゃんの暮らしの知恵を紹介しています。

第16回の12月(師走)。
12月の身延町の朝はマイナス2度。
冬は空気が澄んでいて、この日は雲ひとつない青空。
「朝は寒いから外に出たくないよね」とおばあちゃん。
そうは言っても、しっかりと午前中に家事を済ませていらっしゃるところはさすがです。

田んぼの藁を使った自家製しめ縄作り

今日おばあちゃんの家を訪ねたのは、「南天の実」を頂くため。

おじいちゃん、おばあちゃんの家の植山には竹林があります。
赤く見えるのが南天です。
猿に食べられてしまうため、かなり実が少なくなっていました。

私たちは年末の恒例行事として、お米を収穫した後の藁を使って、しめ縄(注連縄)を作ります
収穫後の藁の使い道は、粉砕して田んぼにまき耕すことで田んぼに肥料として返したり、野菜づくりをするときに保温のために土の上に置いたりして活用します。
それに加えて、自分たちで育てた藁を使ってしめ縄を作るのが毎年の楽しみです。
私たちが育てている農林22号という稲の品種は背が高いため長さも長く、太さもしっかりとしているので、しめ縄に使うにはとても合っているんです。
しめ縄飾りは、災いが家の中に入らないための結界を表しているとのこと。
今回は、そのお正月に欠かせないしめ縄づくりの様子をまずはお伝えしたいと思います。

実は毎年しめ縄作りをするときに、おじいちゃんに見本を見せてもらうのですが、今回はおじいちゃんは体調の関係で顔を出すことができませんでした。
でも、その代わり南天の実を頂いて、おじいちゃんの顔を思い浮かべながらみんなで作りました。

しめ縄作りはまずは藁の準備から
秋の稲刈り、天日干しした後のお米の脱穀を経て、藁は束ねておきました。

これをそのまま使えないのがしめ縄作りの大変なところです。
写真を見て頂くとわかると思いますが、藁の先が曲がっていたり、折れているものがあります。
まずは細い藁の部分を「すく」ことから始めます
髪の毛で例えれば、髪の毛をとかしてゴミを除く作業と言えばいいでしょうか。

くまでを固定して歯の間に藁を入れてひっぱることでゴミや細い藁を除いていきます。
かなり力の要る作業で、腕が痛くなります。
使う藁全てのゴミを取り除いたらまずは準備完了です。
先ほどの写真と比べて先のほうが少しきれいになっているのがわかりますか?

手で持ってみるとかなり長さがあります。
たくさんの量を使えば使うほど、しめ縄の太さが太くなります。
ただ、逆に太さが太くなると作るのも大変になります。
私もしめ縄作りにチャレンジです。
今年は少し太めのものを作ることにしました。

丁寧に端を揃えてからスタートです。

まずは、端っこを針金でとめます
ぐっと藁に食い込むぐらいとめないと藁をよる時に抜けてしまいます。

ここからは力仕事です。
足で端を押さえながら、半分に分けた藁をよっていきます
”藁をよる”というのは初めて見る人はわからない人が多いのですが、テレビドラマで昭和初期の農家のおじいさんが夜なべをしながら藁で何かしている映像を思い出せますでしょうか・・・あの作業のことです。

しめ縄は、半分に分けた藁をよりながら、2つ同時に両手で右に回します
そして2つのねじった藁を今度は左回しに合わせます
ここは頭が混乱するところで、間違えると締りのいいしめ縄になりません。
この時に、右に強くねじった藁を両手で持ちながら左回しにもきつく回すときゅっとしまったしめ縄ができあがります。
この2つの藁を交差するときに、手の力がかなり必要になります。
そのため男性の方が太いしめ縄を作れます!

最後は藁の端を細いワイヤーでとめて、ぐるりと輪にします
おじいちゃんの家からもらってきた南天をつけ、紐をつけると出来上がりです。

出来上がったしめ縄です。
今回は小学5年生の子供たちも楽しそうに作っていました。
南天をつける場所や紐の色などは個人のセンスにお任せです。
同じ材料を使っていてもそれぞれ作り手によって出来上がりが異なります。
これぞ、自家製しめ縄の醍醐味です。

輪ではなく、違う形にした方もいらっしゃいました。(写真右下)
昇り竜のイメージでしょうか。

冬の自家菜園

おばあちゃんの職場でもある自家菜園は、12月ともなると野菜もなくなりさびしくなっていました。
「今植わっているのは、ねぎと大根ぐらいかしら」と教えてくれたおばあちゃん。
これからの旬は聖護院大根と大根。聖護院大根は煮物にするとトロトロになるので煮物にするとのことでした。

夏はスペースいっぱいに植わっていた野菜も、秋を過ぎ冬になるとだんだんとお腹の中に入っていき、今は春に収穫する野菜を育てている最中なので、畑は緑ではなく土の部分が多いです。
(畑が囲われているのは、猿や鹿から野菜をまもるためです。)

お正月の準備・葉牡丹

お正月の準備も着々と進んでいました。
おうちに入るところのお庭には”葉牡丹”が植えられていました。
“牡丹の花”似ていることからお正月に飾られるようになったそうです。

そして収穫した大根は天日干し中でした。
少し干してから、漬物にするそうです。
漬物は野菜が多くとれない冬の保存食になります。
体調を少し崩しているおじいちゃんが食べれたらいいかなと思って、とおばあちゃんは話していました。
誰かを想い、漬物を漬けたらとっても美味しくなりそうだと優しい気持ちになりました。

大根の葉も干して、大根を漬ける時に上に乗せるのがおばあちゃん流。
大根の葉も気持ちよさそうにお日様の日差しを浴びていました。
無駄にしない生活が身にしみているんだなぁと感じます。

今年もおじいちゃん、おばあちゃんの暮らしからたくさんのことを学びました。
自宅の菜園で手間をかけ、採れたものを工夫して食べる暮らし。
夏にはししとうが採れて毎日食卓にのぼり「もう飽きたよ」とおじいちゃん。
楽しみにしていたとうもろこしは、猿に網の隙間から取られて、初物の1本づつしか食べられなかったり、白菜は外側を虫にほとんど食べられ、内側しか食べられなかったり。
それでも、「しょうがないよね」と陽気に笑うおばあちゃん。

過疎地での山近くでの二人暮らしは、1週間誰にも会わず、お互い以外と話をしないこともあるそうで、時々少しさびしそうな顔も見せますが、お互いに元気で動けるようにと1日に1時間のウォーキングを心がけていらっしゃる姿は、本当に頭が下がります。

 新しい年も、いろんなことがあるかもしれませんが、お二人から元気をもらいながら、私もお二人の暮らしをレポートしていきたいと思っています。

編集後記

12月はおじいちゃん・おばあちゃんの暮らす山梨県身延町の特産である”あけぼの大豆”の大豆収穫時期です。
6月中旬に植えた大豆の種は、10月中旬に枝豆となり、11月末~12月頭に収穫を迎えます。
今年は豊作で、たくさんの大豆を収穫しました。

この無農薬の大豆を使って、2月には大豆・麹・塩のみで手前味噌づくりをするのが恒例行事。
”だし”いらずのお味噌になりますよ。

豊田有希

1975年大阪生まれ 小さな頃は「芋掘り」が大好きなやんちゃな女の子。 1997年一部上場企業へ就職し、2016年3月に退職するまで19年勤務。 2010年田んぼできずなづくり事業を山梨県身延町でスタート。 翌年一般社団法人風土人を設立。代表を務める。偶然か必然か名前の漢字は、「豊」かな「田」んぼに「希」望が「有」る。 好きを仕事に生きていく。

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豊田有希

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