Categories: キラリ☆職人技

この世にゴミはない!廃棄物を有効資源に変える、中間処理場のスゴワザ

家づくりに関わる職人さんにスポットを当てる連載「キラリ職人技」。
普段、あまり見る機会がない職人さんたちの仕事ぶりを紹介し、その技がどのように家づくりに活かされているかをリポートします。

初回である前回は、住宅の解体を行なう解体業者さんのスゴ技を紹介しました。

今回は、その続編として解体現場で出た廃材はどこへ行き、どのような処分がされているのかを追います。
実は沢和さんは、全国でも数少ない自社で中間処理場を持っている解体業者さん。

自前で中間処理場があるからと言っても、処理できる能力が限界があるのが現状。
解体工事には、中間処理場業者さんの技術が必要不可欠なんですよ。
今回は私がいつもお世話になっていて、素晴らしい技術と心意気をお持ちの会社を2社ご紹介します!

第1回目に引き続き、沢和さんに中間処理場の朝日金属さんと、タツノ開発さんの2社をご案内いただきました。

分別してリサイクル! 素材ごとに揃う、専門中間処理場

建物を解体すれば、当然ですが廃棄物が必ず発生します。
現在の法律では、一定規模以上の建築物を解体した際、コンクリートや木材、瓦、鉄などを分別し、再資源化することが義務付けられています。

沢和さんが「産業廃棄物処分を一貫して行う」というのは、こうした分別・運搬、その後の処理に至るまでを、一括して自社で担当されているということです。

分別や運搬などについては、外注する解体業者さんも多いなか、沢和さんのような動きは珍しい例と言えます。
これも、コスト削減とリサイクルへの責任のため。
それだけではなく、優良な中間処理業者と長きに渡り関係を築き続けることも、解体費用削減のための企業努力なのです。

そして、分別されたそれぞれの廃棄物は、専門の中間処理場へ運ばれていきます。
一見すると利用価値のない廃棄物ですが、しっかりと分別することで、貴重な資源として再利用されるケースが多いのです。

それでは、分別された「鉄」を例にとって見ていきましょう!
やってきたのは、愛知県春日井市の朝日金属株式会社さんです。

こちらでは、鉄をはじめとする金属のスクラップを中心としたリサイクルをしています。
東海エリアでナンバー1の機動力を誇る、国内最大の処理施設です。
解体後に出た鉄は買い取っていただき、その買取金額が、解体費用を下げることにつながるんですよ。

朝日金属さんは資源回収をするために、収集運搬車は合計100台以上が用意されています。
トレーラーからワゴンまで、スクラップの種類や量にあわせたさまざまなタイプの車が揃っていますね。

スゴ技1・・・人間5万6000人分の力で切断&圧縮

このスゴ技をご説明いただくのは朝日金属の桑原さん。

こちらは集まる鉄の量が多い分、対応できる能力も必要とされます。
そのため活躍する機械設備の規模は、想像をはるかに超えていました。

収集した鉄を選別・仕分けし、3500t圧のギロチンシャーで切断します。
3500t圧と言われてもピンときませんが、1t=人間約16人と考えると、3500t=人間5万6000人分!
5万人分以上に相当する力を発揮して、ビル工事現場で見られるような大型のH型鋼材も効率よく切断していきます。

H型鋼材とは?

断面がH形をした形鋼。耐圧縮力や曲げに耐える力が大きいことが特色の鋼材で、ビルなどの建築に用いられます。

こうして切断した鉄や自動車等の大きなものを、600馬力の油圧プレス機で圧縮します。
これほどまでに大スケールの設備が揃う処理場は、国内でも数少ないとのことです。

圧縮ブロックは1つ約300㎏、これは自動車1台分に相当します。
天然資源の少ない日本では、鉄スクラップの再資源化を望む声が高まっています。
切断や圧縮することで効率よく運搬する形にし、新たな鋼材に生まれ変わるべく国内外へ出荷されます。

スゴ技2・・・持ち込まれた鉄の放射線量も調査!

朝日金属さんでは、自社の回収以外に、業者からの持ち込みも受け付けています。

こちらは、持ち込んだ金属を車に乗せたまま、重さをはかる計量機です。
上には放射能測定器が付いていて、持ちこんだ廃材から放射能物質が発生していないかを測定しています。

以前、「鉄くずから微量の放射線量測定」という報道がありました。
鉄の中に放射性物質がないかチェックしているのだそうです。

ちなみに、朝日金属さんは鉄専門のリサイクル会社ですが、木材専門のリサイクル会社も存在します。
木材以外の異物を取り除き、細かくチップ状にされ、木質繊維ボードや紙、燃料などに生まれ変わります。

2・ごちゃ混ぜの産業廃棄物が建築用の「砂」に生まれ変わる!

先程は鉄専門でしたが次は、どんなものでも持ち込みできる常滑市にある総合中間処理場「タツノ開発」さんへ伺いました。

ここから案内をしてくださるのは、タツノ開発の若林さん。

総合中間処理場と言いますと?

廃棄物を埋め立てるといった最終処分を行なう一歩前の場所です。
ここでは、さまざまな種類の廃棄物を減量化、資源化しています。

タツノ開発さんでは、廃棄物を再び利用可能なものとするため、できる限り資源として蘇らせるよう工夫と努力をされています。
中でも全国で先駆けて取り組んだスゴイ施設を案内いただきました。

スゴ技3・・・廃棄物を砂に蘇らせて製品にする

ものすごい量の廃棄物ですね。

ここにはさまざまな種類の廃棄物が集まりますが、さて、最後にはどんな姿になると思いますか?

正解は、「砂」でした。

いろんな素材や形状の廃棄物からサラサラの砂に変貌する様子は、まったく想像がつきません。
その魔法のような課程を、現場責任者の神野さんにご案内いただきました。

ここに持ち込まれるものは石、コンクリート、ビニール、紙などさまざまな種類の廃棄物が混在し、大きさもさまざまです。
そうした廃棄物をベルトコンベアに乗せ、人の手と機械とにより分けています。
50㎝から40㎜の廃棄物を3回の工程を経て分別し、大きなものは破砕します。

あの機械は何ですか?

「トロンメル」と呼ばれる回転式の選別機です。
網の籠が回ることで、大きいものと小さいものとにふるい分け、人間の手では分別が困難な40㎜以下の廃棄物を取り除きます。

たとえば、丸い形状のもの、つまりガレキは一番下に転がっていく仕組みになっています。
とにかく「分ける」という作業を徹底しています。
効率良く分けることで、安価なコストでリサイクル率を高めているんです。

あちらは「ハリケーン」という、もみあらい機です。
二重構造になっていて、外側と内側のドラムが逆回転することで、ハンマーでたたくような水洗いをします。
こうした水洗いプラントは、日本でわが社が初めて導入しました。

砂として使われなかったものは水、最後は人の手できちんと分別し、なるべく捨てるものがないようにしていきます。

そんな工程を行い、1日できる砂の量はなんと50t!
最後には、見事、砂の姿に生まれ変わりました。
サラサラの触り心地で、元の姿が想像できません。

そしてリサイクルするものは、先ほど使っていた水もリサイクル対象なんです。

この大きなタンクは脱水プラントです。
薬品を使って砂と水とを分け、砂は製品として販売し、水は再利用しています。

廃棄物を砂にして販売しているのは、国内でもタツノ開発さんだけ。
作られた砂は、水道管やガス管工事の際に使われることが多いようです。

ただのゴミとして埋め立てるのではなく、新しい姿に変え、活躍の場を提供しているタツノさん、すばらしいです!
ちなみに、砂の価格は、2tトラックに山盛り積んでも1コインという破格の安値です。

しかも、これだけの処理を行っている現場の隣には田んぼが広がっています。

これは、中間処理場だからこそ、有害な物質を徹底的に出さないのは当たり前。
近隣に迷惑をかけないようにしているから、処理場の隣でもお米が育つのが私たちの誇りですね。

近隣に迷惑をかけないクリーンな中間処理場の努力は次に紹介する、焼却場でも発揮されていました。

スゴワザ4・・・環境に優しい焼却

なかには、どうしても再利用できないものが発生します。
こちらは現場担当者の川原さんにご説明いただきました。

それをそのまま埋め立てるのではなく、最終手段として燃やすことで5/200以下にカサを減らし、ゴミの減量化に努めています。
焼却量は1日に100t、焼却時間は1回につき10~15分、多い時で1日に20回繰り返します。

そのまま最終処分場に捨てた方がお金も手間もかかりませんが、ゴミを捨てる場所にも限りがありますからね。

国や市からの助成金は出ているんですか?

それが、ないんですよねぇ。

煙突からもくもくと出ている白いものは、煙ではなく蒸気です。

ダイオキシンが出ないよう、フィルターでカットもしているし、環境への配慮も怠りません。
さまざまな種類の産業廃棄物を再資源として蘇らせるためには、職人さんたちの技術と設備を駆使して、徹底した分別が行なわれていました。

何でも燃やせるがゆえに大黒様まで廃棄物の中から出てきたことがあるそうです。

燃やすに燃やせなくてね、焼却炉の前に飾っていますよ。

なんだかホッコリするエピソードですね。
大黒様に見守られながら、埋め立てるゴミを最小限に抑えるために職人技を日々発揮されています。

いかがでしたか?

家づくりをする上で、「廃棄物処理」のことまで想像を広げる人は少ないかと思います。

ですが、何かを新しく作るには、その影で廃棄物が発生し、処理をする職人さんたちの存在が欠かせないということが実感できました。
こうした現場が「家づくり」の一端を支えていることを知れば、家への愛情もより一層深まります!

石崎幸子

1976年生まれ。書道師範の免許を持つライター・編集者。エンタテインメント情報誌のアートページ担当を経て、特集、グルメ・レジャームックなどの編集に携わる。出産を機に独立。飲食店、アーティスト、企業の代表などを取材し、各人の思いを発信。たま~に、ワークショップ「書道ごっこ」を開催。住まいは築40年越えの借家。壁塗り、椅子の張り替えなど適当ながらも自分でやりたい、二児の母。

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石崎幸子

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