Categories: 富士山と生きる おばあちゃんの知恵

春をおすそわけ・竹の子・わらびと花と会話する暮らし。

こんにちは。
クラッソーネライターの豊田有希です。
富士山と生きるおばあちゃんの知恵では、山梨県巨摩郡身延町に住むおじいちゃん、おばあちゃんの暮らしの知恵を毎月紹介しています。

第20回の4月(卯月)。
4月20日は二十四節気(1年を24に分けた農耕暦)の「穀雨」でした。
穀物を育成する雨が降る時期なので、早速おばあちゃんの畑を見せてもらいました。

おばあちゃんの畑では3月初旬に蒔いたじゃがいもがもうこんなに大きくなっていました。
約1ヶ月前に畑を見せてもらった時には「まだ何にもないよ」と言っていたのに、畑もかなり賑やかになってきました。

畑にはにんじん、ほうれん草、チンゲン菜、絹さや、えんどう、ねぎ、たまねぎ、ニラ、スティックブロッコリー、アスパラガスなど沢山の野菜が植えてあります。

<芽がでてきたにんじん>

ふと見ると、玉ねぎの畝の隣に少し違うタイプのネギのような畑があったので、疑問に思い聞いてみると、「去年収穫した玉ねぎをまた植えたの」とおばあちゃん。
「収穫した玉ねぎをまた植えたんですか???」と思わず聞き返してしまいました。
元々、収穫した玉ねぎを倉庫に置いて少しづつ食べていたが、芽が出てきてしまい、このままだと実が腐ってしまうので土に再度植えたそうです。
そうすると、なんと、玉ねぎが子供を生んだかのように、子たまねぎに分かれるそうです。
それを白い部分と青い部分に分けて食べることができるとのこと。
「えっ、そんなことあるんですか???」と興味津々です。
抜いたものを見せてくれました。
それが、こちら。
小さな玉ねぎになっていますが、元々は一玉の玉ねぎでした。

下の写真を見て頂ければ想像できるかと思うのですが、左上の茶色い部分が元々一玉のたまねぎの皮の部分でした。
土の中に入れると、一玉が小さな玉ねぎに分かれて、掘ると皮が取れます。

このことを知ったおじいちゃんが「最後まで食べるんだねぇ」と笑い、おばあちゃんは「食べれるとことは食べますよ」と笑ったそうです。
この小玉ねぎをお土産に頂いたので、だし汁で煮て食べましたが、小ぶりで食べやすく美味しかったです。
土に植えると分かれるっていうのが不思議ですね。
みなさんはご存知でしたか?

おばあちゃんの春のおすそわけ便には優しさがつまってる

 
さて、今年は竹の子の「表年」。
竹の子は豊作の年です。(毎年今後に表と裏がやってきます)
3月号では、おばあちゃんたちの裏山の竹林に「招かれざるお客様(イノシシ)」が来ている話を紹介しました。
あの後も、ネットを補修しても何度か破られてしまい、おじいちゃんはその度に悔しがっていたそうです。
いのししに見つからないように小さな竹の子がある場所に木の葉をかぶせて、そこに印をつけて自分だけにわかるように工夫しているです。

この時期は、おじいちゃんが朝竹の子を掘りに行き、おばあちゃんがあく抜きをして、ご近所の方や親戚の方にお渡ししているそうです。
こんなおすそ分けいただいたらニンマリしてしまいそうです。

<急斜面で竹の子堀をするおじいちゃん>

<おばあちゃんの台所にはあく抜きをしたたけのこがお鍋にいっぱい!おすそ分けをいただきました>

おばあちゃんは、掘ったまま皮付きの竹の子を送っても受け取った人は忙しいし大変だろうからと、届いたらすぐに食べれる状態で送ってやっているそうです。
竹の子だけではなく、わらびも・・・!
春の恵みである竹の子やわらびはそのままでは食べれないので「あくを抜く」作業に一手間かけなければならなくて、それがなかなかハードルが高いという方も多いと思います。
新鮮だからこそ、「今」しなければならない。
それが、大変。
その大変さを経験してことがあれば(いえいえ、経験したことがなくても)、新鮮な竹の子やわらびがすぐ食べれる状態で届く・・・というのはとってもとっても嬉しいことではないでしょうか。
おばあちゃんの春のおすそ分け便には、春の香り、食材と一緒に優しさもつまっています。

<あくぬきをしたわらび。きれいな緑色を出すには、”灰”を使ってあく抜きをします>

竹の子とわらびのお惣菜を頂く

今年は沢山竹の子がとれるので、飽きないようにといろんなお料理にして食べているそうです。
竹の子の穂先のやわらかい部分は酢の物に、中心部分は煮物に、更に地面に近い少し硬い部分は、フライパンで炒めてバター醤油味に・・・とそれぞれ美味しい食べ方を工夫して。

<おすそ分けを頂いた竹の子の酢の物と煮物とわらび。止まらない美味しさです>

<わらびを醤油・みりんに一晩つけてかつおぶしをかけたもの>

あく抜きをしたわらびを醤油とみりんに一晩つけただけというお惣菜を食べましたが、さっぱりとして美味しいです。
「お酒が好きな人ならおつまににぴったりだよね」というおばあちゃん。
日本酒に合いそうなお味です。

わらびがとっても柔らかかったので秘訣を聞いてみると、あくを抜いた後に、フライパンで空炒りをするとやわらかくなるそうです。
昔からの知恵を継承しながら、テレビやお友達から新しいアイディアを聞くと試して良いものは取り入れていらっしゃるので、すごいなぁといつも思います!

さらに自家製の炒り落花生のお菓子を味見させていただきました。
よくおつまみで食べるあの落花生ですが、畑で収穫した生落花生を干して、炒った、手作りの落花生です。
気になる自家製の味は、販売しているものよりも水分が多いのか乾燥しすぎていない(カラカラではない)ので、豆の甘みや重量をより感じられて美味しかったです。

「咲いたら、喜んであげる」花と会話する暮らし。

以前からご紹介しているのですが、おばあちゃんはお花が大好きです。
そしてお花ととても仲良しです。
毎年花が咲くのは手入れをしたり、お花に声をかけているから。
「咲いたら、まぁ咲いたね!と喜んであげるのよ」という言葉からも、お花を愛で、会話しながら育てているおばあちゃん暮らしが垣間見えます。
4月のお庭はいろんなところにいろんなお花が咲きほこっていました。
おばあちゃんはひとつひとつの花が咲いてくれているのを本当に喜んでいます。
かつての職場で一緒にもらったお花を今も咲かせているのはおばあちゃんだけ、ということもよくあるようです。
そんなこともあり、お花が好きなおばあちゃんの元に沢山のお花がやってきます。
知らないお花は図鑑で調べたり。
そして、花の特性に合わせてどんな環境に置いたらその花が元気に咲いてくれるか様子をみながら、合う環境を見つけてあげるのもおばあちゃんの大切な役目です。

これは白いたんぽぽ。
以前お散歩をしているときに見つけて、根っこを持って帰るわけにはいかないので、「たんぽぽの”綿”なら大丈夫だろう」と持ち帰りお庭にまいておいたそうです。
それから4、5年後のある日にお花が咲いているのを見つけたそうです。
とっても嬉しそうにその話をしてくれました。
直売所では一株400円で売っているらしいので「売れますね」と言ったら、「いや、私は見るのが楽しいから」と一言。
お花に囲まれて暮らしているのが幸せそうです。
おばあちゃんのお庭の春のお花コレクションを一部ご紹介します!

この花は何かご存知ですか?冬に黄色くて大きくて硬い実をつける「かりん」の花です。
あの大きな実からは想像できないピンク色のかわいらしいお花です。

これはえエビネ蘭。
日陰がいいみたい、とおばあちゃん。

香り水仙。
近寄ってみると水仙の香りがします。
とっても小さな花びらなんですよ。

日本さくら草。
さくらに似ているからそう呼ばれているそうです。
たしかに、似ていますね。

スノーフレーク。

クマガイソウ。
扇形の多きな2枚の葉と袋状の唇弁が特徴。
森林や竹林に生育している。

真正面からみたらこんなカタチをしている。

お正月に植える葉牡丹の花。
よく見ると下は葉牡丹の名残がありますね。
こんなにかわいらしいお花が咲くんですね。
花火のようです。

原種系スイセン。
ラッパに羽がついているように見えます。
横からみたら魚にも見えますね。

ピンクのマーガレット。

今日紹介したのはおばあちゃんのお庭の本の一部のお花たち。
今後は手入れ方法なども詳しく聞いてみたいと思います。

編集後記

お庭のひときわめだつところに、青い手袋が・・・。
筒の上に乗せてあるので、誰かがバンザーイをしているみたいです。
これはおじいちゃんの仕業です。

いつもユニークな話し方で笑わせてくれるのはおちゃめなおじいちゃん。
つい、切れにくいはさみを渡してしまった時には、「このはさみはよく切れるねぇ。これを使っていたら日が暮れちゃうよ」を笑いながら教えてくれます。

竹の子ほりをしたおじいちゃんの足袋には、お花がついていました。
これも、もしやわざとではないですよね??

おじいちゃんとおばあちゃんの会話にはいつも笑いがつまっています。
それもまた健康の秘訣なのだと思います。また次回もどうぞお楽しみに。

豊田有希

1975年大阪生まれ 小さな頃は「芋掘り」が大好きなやんちゃな女の子。 1997年一部上場企業へ就職し、2016年3月に退職するまで19年勤務。 2010年田んぼできずなづくり事業を山梨県身延町でスタート。 翌年一般社団法人風土人を設立。代表を務める。偶然か必然か名前の漢字は、「豊」かな「田」んぼに「希」望が「有」る。 好きを仕事に生きていく。

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豊田有希
Tags: 竹の子わらび

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