Categories: 富士山と生きる おばあちゃんの知恵

エコであったか自作の窯で「炭焼き」と、おばあちゃん特製大根料理レシピ

こんにちは、クラッソーネライターの豊田有希です。
富士山と生きるおばあちゃんの知恵では、山梨県巨摩郡身延町に住むおじいちゃん、おばあちゃんの暮らしの知恵を紹介しています。

第8回の12月(師走)。今年も残すところあとわずかとなりましたね。
12月18日、取材に訪れた日は朝の冷え込みが厳しくマイナス2度。
今年一番の冷え込みの朝となりました。畑には霜が降りていて、寒い朝だったことを教えてくれます。
それでもだんだんと朝日が土を照らし始めると霜は乾いていき、お昼頃には背中がぽかぽかして上着を一枚脱ぐほどの陽気になりました。

おじいちゃんとおばあちゃんが暮らしている地域は山と山に囲まれている山間地
そのため、太陽が家や畑を照らしてくれるのは午前中という限られた時間
太陽がでている間に、お布団や洗濯物を干したり、畑仕事をしたりとせっせと動き回るそうです。

そして日が山に隠れたら買い物へ行ったりとおひさまを味方につけた生活を送っています。
 おじいちゃん、おばあちゃん曰く「ここは”空が狭い”から」と。

そんなおじいちゃんの口癖は「晴耕雨読の暮らしだよ」
天気が良ければ外で働き、雨が降れば家で本を読む。
空が狭い土地で暮らすからこそおひさまの暖さやおひさまが命を育むこと、そのありがたみもおのずと感じて生活をしているんだろうと思います。

炭は30万年から使われていた?!

先月の記事で、おじちゃんが高いはしごに登って木を切っている様子をお伝えしましたが、12月となると本格的に炭焼きシーズン到来。

約2日かけて炭をつくるのが毎日の日課!おじいちゃんの手作り炭焼き窯はこちらです。
一度講習に参加をして、そこから試行錯誤をして改良を重ねた窯だそうです。

約30万年前の遺跡から日本最古の炭が発見されているそうで、当時は炭は料理に使われていたと考えられているそうです。
 私たちが炭を使ったり手にするのは、野外バーベキュー、茶道でお湯を沸かす際、そして炭焼き居酒屋などに行った時などでしょうか。
おじいちゃん、おばあちゃんはこたつの電力に「炭」を使っています。
じんわりあったかい炭ごたつなんです。

では、ここで炭ってどうやってできるか?ということについてお伝えします。
普通、木を空気中で燃やすと煙がたちすぐに燃え尽きてしまいますが、窯の中で空気が入らない蒸し焼き状態にすることで、水分をなくし炭素分だけを残してこれが「炭」となります。
「炭」って木の形をしていますが、炭素のカタマリなんですね。

 木材はミネラル分を含んでいるので、ご飯を炊くときに炭を入れると美味しくなったり、水道水のカルキの匂いが炭の表面の小さな穴に付着することで水が浄化されたり、お部屋の匂いの消臭に使われたりしています。

お手製窯の前で火の番をするおじいちゃん。

この窯の中には一度に同じ長さに切った30〜45本の木が並べて入っていて、一回で約2日分のこたつ用の炭を作っているそうです。
火をつける時には、木の枝などの燃えやすいものを手前に置き、3時間ほど火を炊きます
蒸し焼きをしている時の窯の温度は400度〜1000度程度と言われています。ものすごく高温なんですね!

炭作りの副産物も活用した暮らし

炭焼き窯の上の煙突からは、白い煙がもくもくとでています。
煙突の下に置いてあるバケツの中に、えんとつのまあるいところの一番下からポツン、ポツンと雨露のように落ちてくる黒い液、これが木酢液です。
炭を作る行程で木酢液も一緒にできるんです。

木酢液を沢山とるにはどのえんとつの形がいいのか?と観察と実験を繰り返して、今の形のえんとつに落ち着いたんだそうです。
おじいちゃんはいつでも研究熱心。

そして、この木酢液は水で薄めて畑の葉っぱにかけることで、虫除けになるそうです。
おばあちゃんの畑は農薬を使わずに野菜を作っているので、この木酢液が活躍しているんですね。

ポタン、ポタンと煙から落ちてきます。

こちらは灰。これは、畑にまいて土壌改良に使っているそうです。特にほうれん草の畑にまくと効果があるそうです。
炭を作る行程で一緒にとれる副産物である木酢液も、灰も畑に生かされていました。

捨てるものが少ない生活だなぁ〜と感心してしまうと同時に、おじいちゃんとおばあちゃんの仕事がつながっていて、温かい連携プレーに気づくと役割を分けながらも共に暮らすとはこういうことなのかと気づかされます。

今年できあがった炭の一部。
この分量で2日分(朝・夕)のこたつ燃料になるそうです。

おじちゃんに「持ってごらん」と言われて二つの炭を持ち上げてびっくり!重さが全然違うんです。
もともとの木の重量(木がつまっているかどうか)でできあがりの質も変わってくるそうで、重い炭がいい炭なんだとか。

一見同じ炭の棒に見えましたが、重さが全然違って本当にびっくりしました。勉強になりました。

炭のお話はこちらのページも参考にさせていただきました

ダシは○○を使って。煮物はこだわりの「聖護院」大根で

大根の味噌煮。
この時期になると聖護院大根という”蕪の特大版”のような形をした大根がおばあちゃんの畑ではとれます。

この大根は普通の大根よりも”きめ”が詰まっていて、煮るとすごく柔らかくなるそうで、煮物にはこの大根を使うんだそうです。
 「聖護院大根」といえば、京野菜ですよね!

京都の伝統野菜を山梨で?とびっくりしました。

毎年作る大根の煮物。
ある時おじいちゃんが「煮物には聖護院大根がいいらしいよ」と教えてくれたことから、種を取り寄せおばあちゃんの畑での栽培が始まったそうです。

種は8月下旬から9月頭に植え、収穫できるのが11月下旬。
お正月に合わせてこの大根を栽培して、冬の時期やお正月に親戚が集まるときに手作りの大根の煮物を振舞うそうです。 

季節季節に私たちが忘れてしまったり、少し疎かにしがちな行事があると思うのですが、おばあちゃんはそれに合わせて、野菜を作って、季節の漬物をつけて、梅や柚のジャムを作り、季節野菜で煮物を作り・・・と丁寧な暮らしを営んでいる。本当に豊かだなと感じます。

さて、おばあちゃんに煮物の作りかたを教えてもらったところ、さらにびっくり!
ダシは何ですか?と聞いたところ、「お茶を使っているの」と言われ、「えー!お茶ですか?」。

これはおばあちゃんの独自アイディア。
緑茶にはカテキンが含まれていて、風邪予防や体にいいことが知られていますが、体に良いならダシにつかってもいいんじゃない?とひらめいたそうです。

飲んだ後のお茶の葉を使ってダシに活用する。なかなかアイディアマンですよね!

具体的には、朝二回ぐらい緑茶を飲むそうなのですが、飲み終わった急須(お茶の葉が入ったまま)にお湯を入れてお昼頃までおいて置く。そのお茶のだしをつかって大根を煮るんだそうです。

緑茶の味はしないのですが、唐辛子がぴりっときいた味噌味の優しいお味です。
私もレシピを再現して作ってみたのですが、聖護院大根を煮物にしたら、とろっとろの柔らかさで、口の中で大根が溶けていくような美味しさでした。ぜひお試ししてみてください。

聖護院大根を使ったおばあちゃんの煮物レシピ
(聖護院大根ではなくて、普通の大根でも大丈夫です)

材料

  • 大根(1本)
  • 砂糖(三温糖が良い)大1 
  • 味噌 大2
  • みりん 大1 
  • 唐辛子 1本
  • お茶のダシ (大きめの急須1杯分 ※お茶を飲んだ後の3番目位の茶葉にお湯をいれて2〜3時間おいておいたもの)
  • ※この時に砂糖に三温糖を使うと、コクがでたり照りもでるそうなので、おすすめです。

  1. 皮を厚めにむき、大根を2センチサイズに切る
  2. 鍋にお水を入れ、お水から大根を煮る(調味料はまだ入れない)
  3. 沸騰して少し似たら煮こぼす。この時、大根に軽く火がとおる程度でOK
    (竹串でさして通らない程度)
  4. 少し茹でた大根に、お茶のダシ、調味料を全て入れて、大根がヒタヒタとする状態でコトコト煮込む
  5. お茶出し。私はこの急須の2杯分を使いました。

煮込む前の様子。

とろとろになった聖護院大根)大根に黄金色になったら味がしみている証拠。
柔らかさはお好みでどうぞ。

季節ごとに漬物リレー

11月にお漬物にするのよ、と干していて大根の漬物ができあがっていました!

それがこちら。パリパリと歯ごたえが楽しい大根の漬物です。

最近ではご自宅で漬物を漬ける人が減っていると思うのですが、おばあちゃんの家では、夏はぬか漬け、11月には白菜の漬物を、12月には大根の漬物を食べるのが恒例だそうです。

大根は米ぬか(もちろん自家製)と塩と本だし(けずり粉)でつけたシンプルなお味。
毎日ご飯にお漬物は欠かせないそうなのですが、おじいちゃんの体のことも心配なので、毎日少しづつ樽から出して、食べています。

おばあちゃんのゆずジャム大人気!

11月号で紹介したおばあちゃんのゆずジャムなのですが、今回もまたご賞味させていただきました!

一回に15個くらいの柚子を使ってジャムを作るそうなのですが、今年はもう4〜5回作っているそうで、作っては姉妹や近所の方に差し上げたりしているそうです。そして毎年楽しみに待ってくれている人も少なくないそうです。

おばあちゃんの柚子は火を通さず作ります。(レシピは11月の記事を参照

そのため、とてもフレッシュで、苦味が全くないんです。
普通の柚子ジャムではどうして火にかけるんだろうね?と話をしていたのですが、おそらく家の庭でとれる無農薬で新鮮で肉厚のゆずなので、防腐剤などが使われていないから、煮こぼす必要もなく、そのまま使えるのではないかと話しました。

今年は去年に比べて柚子が少なかったようなのですが、数回に分けて収穫しては、ジャムにしてみなさんに配っているようです。
作ったそばからなくなっていく、という感じのようなのですが「みんなに食べてもらえるのが喜びなのよ」と嬉しそうに話してくれました。

固いカリンの活用法!

秋から冬にかけて黄色い小さなラグビーボールのような形の実が木になっているのに気づく時があります。
のど飴にもよく使われる「カリン」です。はちみつ漬けにしてカリンのエキスの出たものを飲むと喉にいいと言われますが、実が固くて、果物としても食べないですし、包丁で切るのが一苦労なんです!!

おばあちゃんはカリンのはちみつ漬けなどを作ったりはしないそうなのですが、玄関に一つおいてあるのを発見!
玄関に置くと独特の香りが広がり、アロマの代わりに使えるそうです。

カリンを切って香りを楽しませてもらいました。カリンは切らずにポンと置くだけでOK。
もしご近所さんからカリンをいただくことがあれば、玄関に置いてみてくださいね!

編集後記

12月ということで、毎年恒例のしめ縄作りをしました。
脱穀した稲の藁をとっておき、きれいにすいて(ゴミをとって)、手で編んで行きます。
なかなかの力仕事なので、力がないとうまく編めないんです。

仕上げに、おじいちゃんに分けてもらった南天の実と葉と松の実を添えたら、クリスマスリースのようなしめ縄になりました。
毎年ほんの少しであっても、自分たちでできる手仕事を続けていきたいなと思う師走です。

今年の6月から始まったこの企画。読んで下さりありがとうございました。
来年もさらにおじいちゃんとおばあちゃんの知恵を掘り起こしてお伝えしていけたらと思っています。
どうぞ引き続きご愛読いただけたら嬉しいです。

豊田有希

1975年大阪生まれ 小さな頃は「芋掘り」が大好きなやんちゃな女の子。 1997年一部上場企業へ就職し、2016年3月に退職するまで19年勤務。 2010年田んぼできずなづくり事業を山梨県身延町でスタート。 翌年一般社団法人風土人を設立。代表を務める。偶然か必然か名前の漢字は、「豊」かな「田」んぼに「希」望が「有」る。 好きを仕事に生きていく。

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豊田有希

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