こんにちは、クラッソーネライターの豊田有希です。
富士山と生きるおばあちゃんの知恵では、山梨県巨摩郡身延町に住むおじいちゃん、おばあちゃんの暮らしの知恵を紹介しています。
第2回めの6月(公開は7月上旬ですが…)は「梅酒だけじゃない。やってみたら簡単♪梅の活用法」をご紹介します。
おばあちゃんの漬けた梅干(甲州小梅)赤紫蘇も家のとなりの畑で育てた自家製です。
5月後半から、恒例の梅仕事が始まっていて、梅仕事の名人である章子さんは、
毎年、田植えを終えた頃から梅を漬けはじめます。
今日は一緒に梅ジャムなどを作りましょう!
と声をかけてくださいました。
私たちの食卓に身近な梅。中国が原産で、平安時代には既に日本に入ってきたと言われているそうです。
梅干が重宝されるようになったのは鎌倉時代あたりで、昔は貴重な薬とされていたようです。
梅に含まれるクエン酸には疲労回復効果があり、梅干には食欲増進の働きがあると言われていますね。
6月に梅干を漬けて暑い夏に備えるのは、昔の人から受け継いだ知恵なのですね。
日本では梅の生産量第一位は和歌山県ですが、山梨も和歌山、群馬に続いて第3位の生産量なんです。(平成22年産果樹生産出荷統計より)。
山梨県身延町でおばあちゃんが漬けているのは「甲州小梅(こうしゅうこうめ)」。
みなさま、ご存知ですか?
甲州小梅は「小梅」という名前の通り、果実が4~6gの小さいサイズの梅で小梅の代表的な品種です。
幕の内弁当に入っているあのカリカリっとした梅が甲州小梅のサイズです。
余談ですが、この美味しそうなお弁当は身延山門前田中屋旅館さんの特製お弁当。
身延にいらしたら是非召し上がってみてください!
小梅は梅の中でも一番早く実がなる品種なので、5月中旬あたりから梅仕事が始まるんですね。
おばあちゃんは、梅それぞれに合った工夫をしています。
梅干に漬けるのはカリカリの甲州小梅。
梅ジュースやジャムにするのは1粒が約40~70gのあんずのような甘酸っぱさが特徴の豊後梅(ぶんごうめ)。
ちょうど豊後梅のジャムを作ったよというおばあちゃんは
今年は作らないでおこうかと思ったんだけど、立派な梅がたくさん落ちていたのを見て、もったいないなあとエプロンいっぱいに抱えて持ってきて、ジャムを作ったのよ。
とおちゃめな笑顔で教えてくれました。
自然の恵みを頂くことが、ごくごく当たり前の生活。
「あれが食べたい」と簡単に買いに行ける都会の生活とは違って、「あるもの」を工夫して食卓に彩りを加えていく、そんな暮らしは何とも豊かに感じます。
おばあちゃんの豊後梅のジャムは、橙色が鮮やかです。
レシピは後ほどご紹介しますね!
おばあちゃん流のおすすめ食べ方はヨーグルトに添えて。
きなこも入っているから健康的♪ 豊後梅ジャムの甘酸っぱさとヨーグルトがぴったり美味しかったです。
梅仕事は、梅を拾って梅酒や梅干し、梅ジュース、梅ジャムなどを作ること。都会では6月になると袋詰めされた梅が並びますが、自然が豊かなところでは、まず梅を拾ったり、木からもいだりすることから。
木からもいだり、拾った梅は、ヘタをとっていろんな方法で加工していきます。
さて、豊後梅の木の下にやってきました。さすが、大きな実をつける豊後梅の木はサイズも大きい!
さすがに、写真に収まりません^^;。
木の下にはたくさんの熟れた梅が落ちています。
見てください!豊後梅のサイズはこーんなに大きいんです。
木は傾斜のところにどっしーんと立っていて、落ちた梅はコロコロ転がって道路の脇にも落ちていて、道路から落ちている梅をヒントに傾斜を上がっていくと大きな大きな梅の木にたどり着いた、という具合でした。
梅を拾うときは、なるべく傷のない梅を選んで拾っているようですが、傷があってもとれば大丈夫。
黄色くて完熟しているものが、梅ジャムに向いているそうですよ。
レシピ1 梅ジャム
分量:梅 1kgに対して 砂糖400g位
(砂糖はいつも使っているものを使ってください。白砂糖、きび砂糖、三温糖など)
使用する梅は豊後梅でなくても大丈夫。甘さは加減してくださいね。
ジャムにするときはなるべく青梅ではなく黄色の熟れているものを選ぶと良いです。
レシピ2 豊後梅の梅ジュース
分量:梅 1kgに対して 砂糖700~800g位、お酢 500ml
ビン4リットル瓶(使う前に熱湯消毒かアルコール消毒をする)
2ヶ月後くらいから飲めるようになります。
途中、時々砂糖と梅が混ざるように瓶を振って混ぜてください。
水や炭酸水と割って、梅ジュースとして飲んだりします。
梅はそのまま瓶に入れておいて、おやつとして食べるときに取り出します。
できあがったおばあちゃんの梅ジュース(左側)こちらは去年仕込んだ物。
豊後梅のジュースを漬けた後の梅。そのまま食べれば立派なおやつに。
甘すぎない甘酸っぱさが農作業で疲れた身体を癒してくれ、柔らかい果肉がお腹にたまるんです。小腹が空いたときや、ちょっと疲れた時に大満足の自然のおやつです。
どうぞ、召し上がって。
レシピ3 甲州小梅の梅干づくり(甲州小梅でなくても大丈夫)
分量:梅 1kgに対して 塩200g(約20%位)
(赤紫蘇は塩でもむと黒い水が流れます。これが”アク”です)
赤い色がついたら、甲州小梅は干さずに食べてくださいね。
梅と赤紫蘇を交互に重ねてもいいし、重ねずに一番上に赤紫蘇を乗せてもお好みで大丈夫。
私は上に乗せていますが、上に乗せると赤色が全体に行きわたります。
実は取材で伺った時はちょうどお昼ご飯前。
章子さんはお昼ご飯に食べようと思ってと、家のお隣の畑からきゅうりをもいだところでした。
私が到着すると、猿や鹿に食べられないようにしっかりとガートしてある畑から人参も掘って見せてくれました。
まさに採れたて新鮮野菜のサラダになりそうですね!うらやましいです。
畑仕事をしながら、お昼ご飯用のジャガイモのあくぬきをしていたり。
今日のジャガイモは畑で育てたメークインと男爵イモの2種類で、油で揚げて食べるそうですよ。
美味しそう!
山の麓にある家には、猿や鹿が訪れて、網や柵を超えて手を伸ばしたり、知恵を駆使して育てた野菜を食べてしまいます。
こちらは人参が植えられている場所。
収穫する度にネットを外したりするのが逆に大変になっちゃってね。
でも、作ったものを全部食べられてしまうのは悲しいから。
と、今年からバッチリネットをかけているそうです。
山あいでの自給自足の暮らしは、猿や鹿などの動物との知恵比べの生活でもあるんですね。
俺たちは、毎日サンデーだから。
と笑う修身さんと章子さん。
動物たちが畑に来ているかどうかは、よーく見ているそうです。
さてさて、6月身延町では、「あけぼの大豆」という先月紹介した「地大豆」の種まきの時期。
いたるところで、種まきラッシュです。
この「種」は実は身延町の曙地区という限られた地区で育てられた貴重な種なんです。
ブランドと質を守るため、種は曙地区でのみ作られているんですよ。種を蒔いたら早速鹿に食べられた・・・なんていう声も聞こえてきます。大変・大変です!!
枝豆として食べれるようになるのは10月、大豆としての収穫は11月後半から。このあけぼの大豆の味噌は絶品です。
だし要らずのお味噌汁になりますよ。
収穫までは動物や毎年変わる天候との知恵比べの日々が続きます。
去年は町全体的に不作だったので、今年は豊作を願うばかりです♪
この一粒の種から1度食べたら忘れられない枝豆と大豆がたくさん育ちます。
来月もどうぞお楽しみに!