家を買うのに外せないのは住宅ローン。
いきなり何千万ものローンを組むことになりますが、「返済額は家賃と変わらない」と思うと、気軽に借りられそうだと思ってしまいます。

住宅ローンは借金です!
ただ金利が安いところを探すのではなく、現状を把握して、等身大のローンはどんなものかを把握して欲しいですね。

と、いきなり話し出したのは、元・銀行員のカネ美さん。
カネ美さんとは、銀行で住宅ローン担当者として10年以上勤務し、あまたのローン希望者の審査に携わってきた方です。
そんなカネ美さんが、厳しく住宅ローンについて教えてくれます。

みなさん、本当に気軽に考えていらっしゃいますが、住宅ローンって全然簡単じゃないんですよ。
そんなことは、銀行ではとても言えなかったのでこちらで言わせていただきます!

かなり、踏み込んだ内容となるので、覆面を条件に色々とお話いただけることになりました。
今回は「初めての住宅ローンの考え方」についてです。

住宅ローンは大きな借金をするということをよく考えて

北村

簡単じゃないとはおっしゃっていますが、カネ美さん的に真剣に考えた住宅ローンとはどういうことなんですか?

私は収入や将来に本当に合った住宅ローンが、真剣に考えた結果の住宅ローンだと思います。
ローンを組む時に目安にしていただきたいのは、返済比率です。
一般的には25%から30%と言われていますが、私の会社では返済比率30%以内の尺度で判断していました。
返済比率が30%をオーバーするローンを希望する方は、車のローンが残っていたり、クレジットカードのショピングローンが残っていることが多かったです。
ちなみにその場合、全額返済してもらってからでないとローンは組めません。

北村

返済比率が30%以上になると生活が苦しそうですね。

そうですよ!
購入金額のほとんどをローンで賄おうとしていて、家計を圧迫するような返済額になるものは、「背伸びしたローン」と、個人的に呼んでいます。
そういう、背伸びしたローンを組もうとする人が多いんです。
例えば、年収300万の人が3000万のローンを組む場合、毎月8万返済でも、返済比率30%を超えています。
インターネットに無料でできる「ローンシミュレーション」のようなサービスがいくつかあるので、試してみてはいかがでしょうか。

「プロパー決済」で通ったローンは、返済が苦しくなる可能性も

北村

ところで住宅ローンは事前審査、本審査とありますがこれは誰が審査しているんですか?

銀行の場合、事前審査も本審査も委託している審査会社が判断しています。
このような住宅ローンを「保証あり」と呼び、商品や銀行によって違いますが数十万円の保証料がローンの中に入っています。
その「保証あり」ローンが通常のローンですが、落ちてしまった人には、「プロパー決済」という支店長決済のローンの審査という方法があります。

北村

支店長決済は、通常では審査に落ちてしまう方の救済措置ですか?

救済措置といえばそうですが、おすすめできるものではありませんね。
支店長決済というのは、審査には落ちたものの、将来的に見込みがある方の場合、支店長の判断で融資ができるのです。
しかし支店長決済の場合、金利が通常より何%か高めに設定されます。
そして給与振込の場合、決済する支店の口座に振り込みをしてもらうようにするなど、通常のローンよりも条件が厳しいです。

北村

支店の口座に給与を振り込むのはどうしてですか?

残念ながら、プロバー決済のお客様は延滞率が高い傾向にあるからです。
保証会社がNGを出すということは、なんらかひっかかることがあるということなので、お金の入りを監視する意味でも、給与を振り込みがローンを借りる銀行の支店口座にすることは必須です。
知り合いに聞いた話ですが、プロバー決済の中には退職金まで見越して返せる見込があると判断して、貸付した例もあります。
退職金というのは、非常に不確実なお金であって、これも見込みに入れる場合は相当な属性の悪さ、つまりそのローンは背伸びをしている可能性が高いです。

北村

お話を聞いていると、支店長決済のなんでもあり感が怖いです。
それはよくあることなのですか? 

どうでしょう。
強化月間など数字をつくらないといけないシーズンに、乱発することもありました。
支店長決済というのは、「背伸びしたローン」でも通ってしまう点が怖いところなのです。
現在の年収や勤続年数では審査が通らない場合、退職金まで見越した返済計画を立ててローンを通したケースもありますし、現在の奥さまの収入を含めた収入と考えて高額なローンを組んだ方もいました。

北村

銀行的に数字がほしい時には無茶なローンも通ってしまうとは、複雑な気持ちになります・・・。

頭金を1000万くらい用意する

保証ありの審査が通るような、属性のいい人は返済が滞らない確率が高いのです。
身の丈にあったローンであれば審査は通りますし、1000万くらい頭金を用意しておくなど、ローンだけに頼らない資金計画をお持ちの方が多いですね。
背伸びしたローンを組むと、生活にゆとりもなくなり、その結果滞納し始めるというスパイラルにはまっていくのです。

北村

背伸びしたローンって、頑張れば返せるといいようなレベルではないのですか?

よく考えてください。
何千万という金額を借りて、何年もかけて返し続けるんですよ。
無理したら、自然と生活が圧迫されて、ローン返済にも影響が出ることは想像がつきますよね。

北村

ホントですね・・・!!

背伸びしたローンで、親がローンを返していることも

その背伸びしたローンで支払いが滞ってしまったお客様がいたんです。
たしか6万ちょっとの返済額ですが、ご本人と一切連絡がつかなくなりました。
住宅ローンを組む時に土地などを抵当を入れるんですが、その時はお父さまの土地が抵当に入っていて、連絡がつきました。
一連の話をした結果、「うちの子供の不始末だから」と親御さんが代わりに返してくださっています。

北村

自分が借りたローンなのに、親が返すなんて・・・。

もし払えない場合は、最悪利息だけ払うとかやれるだけのことをするしかないので、正直に銀行に相談に来ていただきたいですね。
でも銀行業務的には管理が煩雑になり、残高もグチャグチャになるので、銀行員泣かせの案件ではありますけどね。

安全なローンを組むにはどうすればいいの?

北村

返せなくなるようなローンを組まないようにしたいです。
どうしたらいいいんですか?

安全なローンを組むには、シミュレーションで返済比率30%以内の金額を知ることから始めましょう。
奥さまの収入を当てにせず、旦那さまの収入だけで返済できる範囲で金額を決定してください。
その理由は、奥さまは出産、子育てなどで働けなくなるリスクが高いので、それを当てにしてローンを組むと返済計画が狂って苦しくなります。
また、「子供は何人?今何歳か?将来どんな教育受けさせたいか?」など、将来のことを想定しないといくらお金が必要なのかわかりません。
ぜひライフプランを立てて、将来必要なお金をざっくりでも把握して考えてください。

北村

なるほど、奥さまの収入は不確定要素が高いのですね。

先ほどの退職金もしかりで、もらえる確率は絶対とは言い切れませんよね。
また、自分たちのベストな借り入れ範囲を明確に知るなら、地銀、大手銀行の住宅ローンの審査を受けてみてください。
商品によって基準が厳しく決まっているので、審査の答えが明確です。

北村

この話を聞いたら、絶対無理したくないと思いました!

銀行も商売ですし、支払いが滞るということを避けたいので、リスク回避は徹底的に行います。
審査に落ちたということは銀行的にリスクが感じられると判断されています。
お客様はそのローンは身の丈に合っていないと解釈し、減額したり商品を変えたりしてみてください。

今回のまとめ

初回から盛りだくさんの内容でしたが、内容をまとめました。

■ローンの考え方

  • 背伸びしたローンは生活を圧迫して滞納という地獄を見る
  • 一般の住宅ローン審査に落ちてしまったら、支店長が決済する「プロバー決済」で審査が通る可能性もある
  • 「プロパー決済」は無理して通したローンであることが多く、あとで家計が苦しくなる可能性が高い

■無理のないローンを計画すべし

  • 返済比率は30%以内で抑えること
  • 旦那さまの収入だけで返済できる範囲でローンを組む
  • 将来のライフプランを大まかに立て、いつ、いくらお金がかかるか把握しておくこと
  • 審査に落ちたら減額したり、商品を見直し、ローン担当者に相談してベストを探ること

カネ美さんからは、初回から怖い現実を教えていただきましたが、住宅ローンを借りようとしている方にとっては二の足を踏んでしまった方もいるのではないでしょうか。

お金を借りることになれば誰でも慎重になると思うのですが、なぜか住宅ローンは意識が軽くなる方が多い気がします。
あとから苦しまないローンを組むには、「住宅ローンは借金」だという認識を持って、無理のないプランで借り入れすれば大丈夫です。

無理のないプランを立てるためには、金利が安いほうがお得な感じがしませんか?
マイナス金利で住宅の金利が下がっている今こそ、家を建てるチャンスだと思っている方が多いと思います。

そこで、次回は「住宅の金利は安いほうがお得なの?」について、カネ美さんにじっくり教えてもらいます!