名古屋駅から名鉄津島線に乗り、約30分のところにある愛知県津島市。
織田信長も見物したと言われる尾張津島天王祭や、天王川公園の藤棚が有名です。
かつては港町で貿易によって栄えた町であり、織田家は津島港の経済力を背景に勢力を拡大したと言われることから、「信長の台所」とも呼ばれていました。

近代に入ってからは繊維業が盛んになり、織機の音が「ガシャーン、ガシャーン」とどこからともなく聞こえてくる町に変化。

そして今、その音も賑わいもなくなり、昭和の面影を残した雰囲気のある町並みが残っています。

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ただ静かな町として寂れていくのではなく、最近は町並みと空き家を活用したイベントが精力的に行われ、少しずつ人が集まってくるようになっています。

その仕掛け人の一人であり、東京在住・津島市出身の小林慶介さん。
2年前から「津島ツムギマチプロジェクト」を主催し、週末になると地元の津島市に新幹線で帰り、空き家と人を結びつけて町にぎわいを取り戻す活動をしています。

2年の間で9回ものイベントを開催し、2016年12月には古民家を改修したクラフトとカフェのインキュベーション施設「本町ラグザ」をオープン。

地元に根をおろしているわけではなく、週末地元民ながらもこうした活動の旗振り役をするのはかなり珍しいこと。
そんな小林さんに津島の空き家の活用から、定住促進につながる活動や想いについて伺いました。

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年に9回のイベントを行う津島ツムギマチプロジェクト

津島ツムギマチプロジェクトは、特に津島駅と津島神社を結ぶ天王通りと本町などを中心に、物件の情報の発信や、空き物件を活用したイベント、利用希望者と空き家オーナーとのマッチングなどを行っています。

このプロジェクトを行うにあたり、小林さんはなぜ空き家が増えていくのかを知るため、持ち主と使いたい人の悩みを調べました。

持ち主側の悩みは、すでにその家を離れていることと、金銭的な負担が大きいこと
離れているのでこまめにメンテナンスもできないし、かといってけして安くない解体費用が負担になってしまう。

また、使う側はお金や手間が見えず実行に移しにくいことと、そもそも物件をどう手に入れたら良いかわからないという悩みがありました。

小林さんはこの2つを解決することが、空き家問題を解決することに繋がるのではと考えたそうです。

まずは活用したい人に向けて、実践的な古民家活用のイベントを企画していきました。
10年以上使われていなかった古民家でお掃除ワークショップをしたりと、古民家や古いものが好きな人にはたまらないイベントが開催されます。

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また津島や空き家に親しんでもらうべく、レトロな喫茶店で古民家活用を考える会議を開いたり、クラフトビールイベントや軒先でマーケット、そして変わり種では子供向けプログラミング教室も行われました。

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こうして定期的にイベントを行っていると、少しずつ町の人が関心をもってくれて、「うちにも使っていない家があるんだけど」と相談してくれるようになったそうです。

津島に賑わいを取り戻さなければ・・・。使命感に駆られた瞬間

ところで小林さんは普段は東京の会社におつとめで、住所も東京。
なぜ津島の活動を行っているのかを聞いてみると、4年前の帰省でたまたま天王通り商店街を歩いたことがきっかけなのだとか。

もともと町づくりに興味があって、普段住んでいる東京の近くで、おもしろそうな場所はどこかないかなとぼんやり考えていたんです。
帰省した時、久しぶりに商店街を散歩して、「こんなに寂れてしまったのか」とショックを受けたんです。

学生時代に見た商店街とはがらりと変わり、人の気配がなくなり、お店もほとんど閉まっている。
10年やそこらの変化が大きすぎて、驚きを隠せなかったそうです。

あまりの衝撃でボーッとしてしまっている時、目の前に雰囲気のあるレトロな雑貨屋の25risさん、手紙雑貨専門のお手紙雑貨calmさんを発見します。

この2軒を見てもっと津島にこうしたお店を増やさなくちゃいけないし、このお店を守らなくてはと勝手に思ってしまって(笑)
やりたかった町づくりの活動のことも思い出して、津島を活動の場にしようと思いついたんです。

そこからの行動は早く、まずはこの2軒のお店に突撃メールを送ります。
ダメ元で送ったメールにもかかわらず、好意的な返事がすぐにやってきました。
そして、昭和初期まで呉服屋さんだった自宅を改装したシーズンカフェ茶の間のオーナー山内さんを紹介してもらうことに。
山内さんは、地元のマルシェの実行委員などを行う活動的な地元の方で、彼女も心意気に賛同してくれました。

そして4人は意気投合し、津島の最大の魅力である「レトロな雰囲気」を活かしたイベントを開催しようと、商店街に作家さんを30名ほど呼ぶクラフトマーケットつしまさんぽ」を開催。

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空き家になっている古民家や、店舗を会場にして、津島近隣の作家さんが集まり作品の販売やワークショップが催され、たくさんのお客さんが津島を訪れました。
この年に1度のイベントはとても好評で、今年で3回目なのだそうです。

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久しぶりに天王通りは人がたくさん訪れ、町の人も「津島って人がこんなに集まる所だっけ?」と驚く声が。

地元の方にとって、このイベントは住んでいる場所の魅力に気付くきっかけになっているのですね。

ハードルの高い定住ではなく、商業施設で賑わいを定着させる

つしまさんぽから始まり、空き家活動の「津島ツムギマチマチプロジェクト」に発展し、空き家と活用したい人の距離を縮めるイベントを行ってきていますが、まだ達成できていないことが・・・。

それは津島の空き家に住んでくれる人が見つからないことです。

イベントでは人がやってきますが、一過性の賑わいでしかない。
この賑わいが根付くためには定住者を増やしたいところですが、さすがにハードルが高い。

それならば商業施設を作って、作家さんなどが定期的に集まる場所にしたらもっと賑わいが恒常的になるのではないかと考え、本町ラクザ構想が浮かびました。

これは、江戸時代末期からあるこの町家を改修して、カフェやクラフト作家の月額1万円からのインキュベーション施設にするというものです。

住まいは東京ですが、津島でこの古民家を僕が全部借上げてインキュベーション施設として作家さんたちに貸すことにしました。
身銭を切ってでも行動しないと、現状は何も変わりません。
もちろん怖いですが、やるしかありませんよね(笑)。

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早速築100年超えの空き家の改修がスタートします。
この津島ツムギマチプロジェクトに参加しているコアメンバーを中心に、毎週イベント的に作業をしています。

さすがに大工さんのお仕事はできませんが、大工さんが作業している中で有志のメンバーが床材にペンキを塗ったり、改修作業を手伝います。

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参加者の中には仕事が建築関係の方、クラフト作家さん、大家さんなどいろいろな方が作業をしに来てお店を作り上げています。
この写真はキッチンカウンターの制作過程。
建築関係の女性スタッフが図面を書いて、それを作っているのです。

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今後はゲストハウス計画があり、来年は海外旅行者に空き家を使ってもらい、日本家屋の問題点などを探すテストマーケティングをしていくそう。

津島へ訪問するハードルが下がったことで、イベントの一過性の賑わいから日常的な賑わいに変化していく日が近づいている気がしました。
本町ラクザがオープンしてからの商店街、また見に行きたいと思います。