現在、家を建てているご夫婦に密着取材をする「実況・家づくり」。
家づくりを経験中の方のお話は、なかなか聞けないものですが、過程を知ることで、これから家を建てる方の参考になることもあると思います。
今回は松川さん邸の第2回。
松川さんご夫婦はともに30歳で、現在愛西市にご自宅を新築中。
第1回目となる前回は「家づくりのきっかけと資金計画」について伺いました。
保険の見直しを行い、その中でマイホームの資金計画を考えるうち「家づくりするなら、今が最適」と決断された松川さん。
驚くことに、お二人は資金計画、土地探し、ハウスメーカー決め、間取りや家具の決定の4つを、2ヶ月間で同時進行でしていたそう!
お二人の徹底した調査力・行動力が、それを可能にしました。
第2回となる今回は「土地探しから土地決定」をテーマに、お話を伺います。
第1回の終わりでご紹介したように、お二人は土地を決めるにあたり、調査項目を設定したそうです。
それが、以下8つのチェック項目です。
情報収集はインターネットの不動産情報サイトと、大手から地元の不動産屋さんまで店舗も3~4軒訪問して、20以上の土地を見にいったんです。
多い時で1日5つくらい見に行ったこともあります。
エリアは勤務地を考慮し、愛西市、津島市で考えていました。
実は松川さんご夫婦は大量の土地見学を重ねるうちに、この項目を作っていきました。
そして、検討段階に上がった土地は3つ。
1つ目と2つめで検討をして、3つめが登場し、2つ目と3つめで比較をして3つ目に決めたという流れです。
数多くの土地から厳選された土地をどうやって絞り込むのでしょうか?
私にとっては阪神大震災での経験が大きく、土地が見つかるたびにハザードマップ(津波、活断層)を見てエリアを絞り込みました。
共働きなので、駅やスーパーへのアクセスも重要。
今後は子どもを持つことも考えているので、学区や学校も大切でしたね。
驚くのは8番めに挙げた「住む市町村の財政と、そのHPから受ける印象」です。
お二人は市町村のHPを見て、その市町村に住むことで、経済的にどんな利点があるのかを徹底リサーチ。
子どもの医療費はいくらまで無料なのかなど、各市町村を比較していました。
朝と夜、平日と休日と時間や日程を変えて、午前と午後の日当たりをチェックし、駅からその土地まで歩いてみました。
また、街の雰囲気は住人の方に訊くのが一番だと思ったので、散歩している方に「今度引っ越す予定なんですけど、住み心地どうですか~」と尋ねたりしてみました。
いきなり知らない人に話しかけるなんて普段はできませんが、高い買い物をするにあたってしっかり調べたいと思うと、自然とできてしまいましたね(笑)
素晴らしい調査力です。
お二人は市町村のHPから受ける印象も大切にしたそうで、これはエリアを絞りこむ際に参考になりそうですね。
そしていよいよ気になる土地が絞られます。
その土地で家を建てることを仮定し、ハウスメーカー探しも同時に行っていたので間取りも作ってもらって、検討しはじめました。
いろいろ見て回る中で上がった候補地の1つは津島市で、駅から徒歩10分、値段は800万円で50坪の土地。
値段面と駅からの距離は大変魅力的ですが、急行が止まらないところと、スーパーまでの距離が遠いので車がもう1台必要になってしまうこと、津島市の財政状況が芳しくないという点がネックでした。
そして極めつけが、「浄化槽設置」が必要という条件。
設置費で約50万円、毎年の維持費(バクテリアなどのニオイ対策)で年間5~6万円ほど必要になる点がどうかと思ったのです。
今度は急行が止まる駅の近くの土地にエリアを絞ったところ、2つ目の土地に出会いました。
1つめの土地より価格が200万ほど高く、日当たりの悪さがちょっと気になったのですが、同じ50坪で、駅からは徒歩5分でスーパーも近くにありました。
実際に歩いてみると、下校途中の子どもたちが大きな声で挨拶してくれてとっても気持ちが良かったんです。
調べたら学区も良くて、子育てにはいい環境かもしれないと思いました。
その地域は有名な小児科があったり、病院も充実しています。
何か合った時に安心な立地だということもわかりました。
1つめの土地と2つめの土地を比較するため、愛西市と津島市に住んだ場合、一生かかるコストとして水道代がどうなるかをホームページを見て試算したんです。
浄化槽を設置して津島に住んだ場合、年間の維持費が5~6万円(毎月4000円~5000円)ほどですが、愛西市で下水を使用すると毎月約3000円。
仮に維持費を4500円で試算し比較すると、年間コストでは下水使用したほうが2万ほど安い。
また水道代は津島市は約4000円(口径20mmで20m3の月額)と愛西市は2000円~2500円と、愛西市のほうが安いことがわかりました。
仮に水道代が約2000円違うと、1年間でランニングコストが2.4万円の差が出ます。
すると、1つめの土地(浄化槽設置条件の津島市の土地)と、2つめの土地(下水使用できる愛西市の土地)は、比較すると年間4万~5万円ほど差が出るんです。
これが30年で120万円以上も差がつく。
もうこの時点で、2つめの愛西市の土地が圧勝です。
松川さんが行った試算を表にまとめてみました。
情報は市のホームページで調べたものです。
津島市(浄化槽設置) | 愛西市(下水使用) | |
---|---|---|
水道料金 | 約4000円 | 約2000円 |
下水道料金 | 約4500円(年間5~6万円と想定) | 約3000円 |
月間コスト | 約8500円 | 約5000円 |
年間コスト | 約10万円 | 約6万円 |
月にするとわずか数千円ですが、年間にすると大きいですね。
金額の高い買い物の決断方法として、金利と毎月の返済額で考える方法をハウスメーカーの担当者に教えてもらったんです。
仮に金利1%としたら約3000円払えば、100万円借りられることになります。
水道代とローンを含めた金額で見ると毎月3500円の差があれば、ローンは100万円増額するのと同じ。
それでも100万円高いことになりますが、2つめの愛西市の土地は価値があると判断しました。
決め手は市の財政で、愛西市はとても優良な財政状況。
住民としては財政が安定している町のほうが暮らしやすいと考えました。
そして愛西市は子供の医療費も小学校6年生まで無料で、津島市は小学校3年生までが無料というところも愛西市優勢になったポイントです。
近所の人に話しかけてみると、どの方も「ここはいいところだから引越しておいで」と言ってくださって、ますますこの場所が気に入りました。
人も暮らしやすさも十分にチェックできましたが、チェック項目で挙げた「土地の形・広さ・日当たり」は少し不満でした。
隣との距離が近いことも気になるし、朝は日が当たりますが、午後は全然日が当たらない点が引っかかって、決めかねていたんです。
条件を全て満たすわけではないが、ある程度の希望を叶えた土地である2つめ。
迷う中で、3つ目の土地が出てきました!
ある日、駅から徒歩15分ですが、70坪、日当たりもよく、角地である今の土地を見つけたんです。
ただ中古物件付きでしたが、解体業者マッチングサービスなどを使えば、自分でも解体ができることを知っていました。
本当に良い土地はすぐ売れてしまうので、今の土地をインターネットで見つけた時は夜でしたが、すぐ車で現地に直行。
どんな物件か確認して「これはいい!」と思ったので、すぐに不動産屋さんに連絡を入れました。
最寄駅は、2つ目の候補地と同じだったのですが、70坪と広く、日当たりもよくお隣との距離もしっかりある。
2つめのネックをすべて解消する土地でした。
しかし3つめのネックは、自分で解体する費用を含め値段が2つ目より200万円ほど高いことと、駅から徒歩15分という点。
駅からの距離は雨の日以外自転車を使えばクリアできるし、歩けない距離ではない。
値段ですが、仮にローンを200万円増額した場合、毎月約6000円返済がアップするので、1回飲み会をガマンすればいいと、考えて3つめの土地で決定しました。
こちらが当時見つけた時の土地。解体前なので中古住宅が残っていますが、角地で十分な広さを感じられますね。
その後、解体工事の匠を使って、解体業者を探しました。
3社比較ができるので、納得して業者さんを選べました。
お願いした会社は、仕事もとても丁寧ですし、周囲への気遣いもできる方たち。
解体工事で使う水は依頼主持ちになると思っていたのですが、『工事期間中だけウチの名義で水道の手配をします』と気遣いをしていただけたことも嬉しかったです。
金額も120万ほどと良心的で安心して任せられました。
今、外構の相談をしているところなのですが、70坪もあると広く庭が取れるので、LDKの外にウッドデッキがつけられるんです。
庭でバーベキューもできますし、小さいですが家庭菜園もできそうなんです。
庭で素振りもできるし、バッティングネットも置けそうなのでワクワクしますね(笑)
多少価格は上がりますが、日当たりがよくて広い場所を選んで良かったと思いました。
ちなみにこの取材をさせていただいた、松川家の新居付近の喫茶店での出来事ですが、マスターと何気なく「今度引っ越すんですよ」と話していたご夫妻。
すると、「え! あんないいところが空いたんだ! お客さんラッキーでしたね!」と近所の方にも太鼓判を押していただくという、嬉しいこともありました。
土地探しは家づくりの一歩ですが、希望項目をピックアップしたり、希望エリアの市町村のHPをじっくり見てみるのは、夢に着実に近づく方法かもしれません。
また、お二人が経験されたように、中古物件を更地にして家づくりができることもわかりました。
土地だけでなく中古物件も含めて検索すると、より選択の幅が広がりますよね。
調査力と行動力を駆使し、ベストな土地に出会った松川さん。
前述のように、この間にもハウスメーカーや資金計画などを同時進行しているわけですから、地道な努力には頭が下がります。
実はこの同時進行に松川さんの狙いがありました。
実は土地によって間取りが変わるので、土地と家は一緒に探さないと正確な金額が出ません。
別々で契約してしまうと、計画がひっくり返る可能性もあるので、土地と家は同時進行で探すほうが絶対に効率いいです。
土地探しと同時進行していた、ハウスメーカー探しについては次回しっかりとお伝えします。
どのような基準で、家づくりを任せるメーカーを決めたのか気になりますね!